あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その26
- 2022/06/19
- 06:30
第2章
■週刊誌時代到来 (5)
マンガの枠にこだわらず子どもたちへ向けた作品を考えていた天馬さん。残念ながら強い思い入れを持って描いていた『かみくずおやこ』は掲載誌の休刊で、終了してしまいます、
そんな頃『週刊少年マガジン』連載時のマンガ家仲間だった吉田竜夫さんが、ある誘いを持ちかけてくれました。
吉田さんは、天馬さんの描く『パトロールQ』(原作/伊藤照夫)や、石川球太さんの『アパッチ投手』などの扉絵を連載初期は描いていました。
この頃は少年向け週刊誌もマンガ専門誌ではありません。連載小説の扉絵のように、連載マンガも人気の画家による描き下ろしのイラストが掲載されていたのです。
吉田さんのデッサン力と魅力的なキャラクター、そして画面の構成力は素晴らしいものでした。また、何よりご本人もそれに奢ることなく常に周囲に気遣い、決して嫌な思いをさせない人物だったのです。天馬さんは後輩ながら、この人はすごい人物だ、とはじめから一目置いていたそうです。
吉田さんは、もともと挿絵画家を目指して上京し、絵物語作家として活躍していました。ただ、絵物語は時代の趨勢と共に徐々に衰退したため、マンガ家に軸足を移していました。
そして、絵物語時代から付き合いのあった梶原一騎さんによる原作の『チャンピオン太』を、『週刊少年マガジン』に昭和37年(1962年)発行の1号から連載し、人気マンガ家となっていました。
この作品は、プロレスマンガで当時の人気レスラー力道山も出てくるため大人気となり、テレビドラマもこの年の11月から放映開始されました。
その11月発行の『少年クラブ』で『かみくずおやこ』は最終回を迎えます。同誌休刊の報は、もっと早く連載陣のマンガ家たちにも伝わっていたことでしょう。
それを聞いたのか、天馬さんのもとに吉田さんから連絡が入ったのです。
「自分たち兄弟がこれから立ち上げるグループに、是非参加して欲しい」という依頼でした。(つづく)
『パトロールQ』吉田竜夫さんによる扉絵
パトロールQの頭部デザインは、後の『新造人間キャシャーン』での
ヘルメットのデザイン原型になっているかもしれません。
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