あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その27
- 2022/06/26
- 06:30
第2章
■ある誘い (1)
吉田竜夫さんが描き出す世界は、その説得力あふれる絵で挿絵や絵物語の頃から定評がありました。
ただ、元々挿絵画家を目指していた吉田さんは、ストーリーを作り出すことはご自身でも不得手だと考えていたようです。
それゆえなのか、絵物語からマンガに転身した時も常に原作付き作品を手がけていました。
『ゼロ戦チャンピオン』や『チャンピオン太』、『大空三四郎』の原作は梶原一騎さん。『スーパージャイアンツ』は宮川一郎さん。そして、レースマンガ『パイロットA』は実弟である丸山健二さん。
九里一平さんが執筆し吉田さんが構成を担当していた『マッハ三四郎』は、久米みのるさんによる原作でした。
土台となる骨太の物語があってこそ自分の絵もより生きる、と割り切っておられたのでしょう。いずれのヒット作も、原作付きだったことからもうかがえます。
しかし、吉田竜夫さんのマンガ家時代のヒット作である『少年忍者部隊月光』は、原作者のクレジットがありません。これは、昭和38年(1963年)『少年キング』創刊号から連載が始まった作品です。
これまで吉田さんは原作付き作品を数多く描いてきたのに、ここでオリジナル作品を発表したのは、いささか突然な感じもします。
『忍者部隊月光』は、太平洋戦争中を舞台に現代の少年忍者たちが活躍するというストーリーです。
荒唐無稽な設定ではありますが、そこには実際に戦争を体験し、忍者や剣豪モノ、そしてサスペンスを好み、それらのジャンルを得意としていた人物がいました。(つづく)
『少年忍者部隊月光』青林堂刊
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