あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その29
- 2022/07/10
- 06:30
第2章
■ある誘い (3)
吉田竜夫さんと九里一平さんという、人気マンガ家としての2枚看板。そして、実は絵も描かれるのですが裏方に専念し、原作やマネージメントを担当していた二男の吉田健二さん。
この吉田3兄弟がグループとしてさらに活躍の場を拡げようとする際、自分たちに足りないものとして、ストーリーの構成力、そしてさらなる幅広い人脈も竜夫さんは必要と考えていたのでしょう。とはいえアクの強い性格ではなく、あくまで自分たちと協調してくれる人でないと上手くはいきません。
そんな条件を持ち合わせた人物として、天馬正人さんに協力を仰いだのです。
昭和30年代は、今より年齢の序列がはっきりしていた頃です。マンガ界でも、先輩後輩の関係もしっかりと残っていました。
後輩たちのグループに参加して欲しいと言われても、普通だったらなかなか承諾するのは難しいことです。
それでも吉田さんは何度も天馬さんの自宅を訪ね、自分たちのグループに是非参加して欲しい、とこれからの事業の夢と抱負を語り真摯に説得を続けたのです。
時には、自分の子どもを連れて天馬家を訪れ、子どもたちを同士遊ばせながら、今後の構想などを話していました。
当初、天馬さんはあまり乗り気ではなかったそうです。
身内同志の兄弟たちのグループに入っても、あくまで外様になります。しかも年下の後輩たちの輪に入ることが出来るかどうかも不安でした。
ですが吉田竜夫さんの人間性と、どうしても自分に参加して欲しいという熱意。その気持ちを意気に感じました。
そして一度病気をした自身の身体のことも考え、最終的にタツノコプロを名乗る以前まだ会社組織になる前の、3兄弟による「吉田竜夫グループ」に参加することを決意します。(つづく)
吉田竜夫グループに参加した頃の天馬さん
(昭和37年1月頃)若々しいお姿です。
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