『「アニメ評論家」宣言』文庫化!
- 2022/08/03
- 06:30
藤津亮太さんの2003年に出た書籍『「アニメ評論家」宣言』が、筑摩書房から文庫化されました。19年ぶりの文庫化にあたり原稿を入れ替え、書き直しも入った増補改訂版です。
藤津さんは、アニメライターとして現在第一線で活躍されていますが、『「アニメ批評家」宣言』はその著書第一作になります。
その後『ニュータイプ』や『アニメージュ』での連載や各誌への寄稿、そしてカルチャーセンターでの講座など精力的に活動されています。
今回の文庫化で改めて読ませていただきましたが、その視点の新鮮さ、気づかされることも多く新鮮でした。
宮崎駿さんや高畑勲さん、出崎統さん、富野由悠季さん、押井守さん、庵野秀明さん、今敏さんなど、アニメファンなら誰もが一度はその作品を通った監督たちを作品から読み解く章や、『宇宙戦艦ヤマト』におけるロマンの系譜、『オネアミスの翼 王立宇宙軍』の時代性など、読み応えのある内容ばかりです。
なにより藤津さんのアニメに対する愛情が、ここまで対象に対して真摯に向かわせているのでしょう。
よく知っているはずの作品も、こういう見方もあるのかと、新たな気づきをもたらせてくれます。
思えば、アニメブーム時より様々なアニメ関連の書籍やムックが出版されました。
ただ、作品に対する見方や考察などで刺激を受けたものは、そんなにありませんでした。
1978年(昭和53年)『アニメモリー78』(スタジオオズ)光風社書店
1982年(昭和57年)『アニメ大好き!』(池田憲章/編)徳間書店
1997年(平成9年) 『20年目のザンボット3』(氷川竜介)太田書店
2004年(平成16年)『アニメーションの宝箱』(五味洋子)ふゅーじょんぷろだくと
各年代に名著がありましたが、ここに加えられるのが『「アニメ評論家」宣言』だと思います。
1977年のアニメブーム前後から、アニメと向き合い続けている藤津さんです。その姿勢はこの初著書からまったくぶれていないことが分かります。
作品から受けた自身の感情を忘れず、そこから作品を俯瞰して分析していく姿勢こそが、藤津さんの個性なのでしょう。
かつてのアニメファン世代から現役世代まで、きっと刺激を受ける書籍です。
ちくま文庫『「アニメ評論家」宣言』(藤津亮太)
竹中労さんや米沢嘉博さん、夏目房之介さんなどの著作に並び
ちくま文庫から出たのもうれしいことです。