氷川竜介さんの新刊『特撮の歴史 大学講義 質疑集』
- 2022/09/03
- 06:30
VOL.1は1988年8月の発行ですから、25年間続けて刊行しておられることになります。こうして活字として残されるのは、後の研究者にとっても貴重な資料になるでしょう。
今回の新刊は、氷川さんが明治大学大学院で、特任教授として学部・大学院で行ったオンデマンド講義「特撮の歴史と技術」の2021年と2022年の質疑録です。オンデマンド講義を見た学生から寄せられた質問に対して、氷川さんが答えた内容がまとめられています。
この講義は、「日本のアニメはアニメ年表だけでは分からない」との考えで始められたものだそうです。
詳しくは、本書のプロローグであるガイダンスに書かれていますが、特撮とアニメの切っても切れない関係、そもそも両者が「テレビまんが」として括られていた時代のことなど、その歴史から丹念に作品を挙げ追う記述は読み応えがありました。
確かに70年代は、アニメも特撮も「テレビまんが」と一括りにされていました。近年、メディア芸術として、メディアアート、マンガ、アニメ、ゲームが上げられていましたが、その中に特撮が入っていません。これではいけない、と危機感を持たれたのが氷川さんでした。
本書の各学生さんからの掘り下げた質問もそうですが、それぞれに対してより深堀してさらに彼らが調べたくなるような答えを提示される回答も見事でした。
ひとつ気になったのは、うしおそうじさんが出征されたとの記述です。うしおさんは兵役には入られましたが、戦地には赴いていなかったとお聞きしました。大石郁雄さんが戦地に出征される際、一緒に行っていたかもしれないがそうなると僕も死んでいた、とはご生前伺いました。多分、ここは氷川さんの記憶違いでしょう。
「テレビまんが」における特撮とアニメの相互関係は、それにプラスして当時のマンガの状況も密接に関わっています。私は特撮も見てきましたがなぜここまでアニメに惹かれるのかを考えると、そこに描かれた絵の力も大きかったと思っています。
多くのアニメがマンガからの影響も受けつつ、より魅力的な絵で展開してくれました。質疑応答で学生さんが、ロボットアニメが後に続出したことを粗製乱造と捉えていました。ですが、私自身は当時各作品ともアニメーターそれぞれの絵柄でしたので、楽しんで見ていたことも思い出しました。
いつもアニメや特撮などを俯瞰から見据えておられる氷川さんの視点は、刺激を受けます。今後の講義も是非実現していただきたいと思います。
ロトさんの本VOL.44『特撮の歴史 大学講義 質疑集 明治大学2021-2022年』
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