あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その36
- 2022/12/04
- 06:30
第3章
■ 虫プロダクション『ジャングル大帝』
天馬正人さんのもとに、舞い込んだ他社作品への脚本参加依頼。
この話は、手塚治虫さん主宰の虫プロダクションからでした。当時制作中のカラーアニメ『ジャングル大帝』の脚本を是非お願いしたい、とのことだったのです。
誰あろうマンガ家時代に自分を励ましてくれた、尊敬する手塚さんの会社からのお話です。しかも原作も、連載当時多大な影響を受けた『ジャングル大帝』なのです。
天馬さんは、自分を見込んで打診してくれたこともあり、この依頼を受けることにしました。内々に吉田竜夫さんに相談し、了解をとりました。
当初はシリーズへの継続参加もという話もあったようですが、やはりタツノコプロの一員ということもあって、1本だけということで勘弁してもらいました。
この脚本が、21話の「バーシィとっつあん」です。この時のペンネームは「五味明」ということでした。多分、当時人気だった作家の五味康祐さんから苗字をいただいたのでしょう。明は、黒澤明監督のお名前からかもしれません。
本当に、ペンネームを色々と考えられるのが好きな方でした。
実は、天馬さんにある時いきなり、「私、『ジャングル大帝』のシナリオを書いたことがあるんですよ」とお話しいただいたのです。
その時は驚いて、こちらから詳しいことをお聞きしたいといくらお尋ねしても、とぼけた調子で「さあ、どんな話だったですかねえ。」と、飄々ととぼけられるだけでした。
各エピソードの脚本家のリストを調べても、天馬正人としてのお名前はありません。そこでペンネームだと思い、お尋ねしても「いやあ、もう忘れました。でも星さんなら、見れば私だとお分かりになりますよ」と、ただいたずらっぽく微笑まれるのです。
その後、随分経って『ジャングル大帝』を見直した上でこのエピソードではと話を向けて、ようやくお教えいただくことが出来ました。(つづく)
『ジャングル大帝』第21話「バーシィとっつあん」五味明脚本
まさか天馬さんが、この作品のシナリオに参加されていたとは知りませんでした。
- 関連記事
-
- あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その38
- あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その37
- あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その36
- あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その35
- あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その34