あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その38
- 2022/12/18
- 06:30
第3章
■タツノコプロ出版部長として (2)
アニメ製作がメインとなったタツノコプロで、吉田竜夫さんはクリエイティブと営業の両面の両輪を先頭に立ち、エネルギッシュに牽引していました。
出版部門は天馬さんに任せていたのですが、新たな企画を考える時には出版部に顔を出し、次はこんな作品はどうだろうか、と天馬さんにも尋ねていたようです。
吉田さんは、タツノコプロの規模が大きくなり社員も増えても、常に「天馬さん、天馬さん」と、あくまで年上として立ててくれていました。
天馬さんは児童文学者協会にも属し、常に子どもたちのために良質な作品を創りたいと願っていました。その思いは、ことあるごとに吉田さんにもお話していました。
同じ思いを抱いていた吉田竜夫さんがある時描き出したのが、『みなしごハッチ』の元となるイラストです。
ハッチの絵を見せられ、その構想を聞いた天馬さんも、「社長、これはいい作品になりますよ」と、即座に賛同したのです。
吉田さんも、この反応に意を強くされたことでしょう。
当時は、スポ根ブーム真っ盛りで実写では特撮が全盛期の時代でしたので、オリジナルの企画で小さなハチが主人公の作品などは、各テレビ局にも見向きもされません。
ですが吉田さんは、どうしてもこの作品を作りたいと、スポンサーも放映も決まる前から制作を始め精力的に企画の実現に奔走しました。
この熱意と努力の甲斐もあって『みなしごハッチ』は放映が決まり、周囲の心配をよそに大ヒットとなります。
出版部門を統括していた天馬さんも、小学館の絵文庫シリーズ『昆虫物語 みなしごハッチ』では、自ら構成を担当します。
この全6冊の絵本シリーズもヒットすることで、「第17回 小学館漫画賞」を吉田竜夫さんにもたらすことが出来ました。(つづく)
小学館の絵文庫『みなしごハッチ』全6巻
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