あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その39
- 2022/12/25
- 06:30
第3章
■タツノコプロ出版部長として (3)
成功が危ぶまれた『昆虫物語 みなしごハッチ』は高視聴率を記録し、絵本では小学館漫画賞を授賞することが出来ました。
マンガ家時代には縁のなかった漫画賞をアニメ時代にもらうことが出来た吉田竜夫さんは、天馬さんにその喜びと感謝の気持ちを語ってくれたそうです。
このこともあり子どもたちに良質な物語をおくりたいと思っていた吉田さんは、自分の信念が間違っていなかったことを実感します。
『ハッチ』に続くメルヘン路線として、『樫の木モック』や『けろっこデメタン』を製作していきます。
そして、さらに絵本の分野でも、オリジナルの児童文学を発表しようと思いました。
それが、アニメ作品のソノシート付き絵本でそれまで付き合いのあった、サン企画から刊行した「竜の子童謡絵本シリーズ」(原作/吉田竜夫)です。
元々、ギターが趣味だった吉田さんは、ご自身で各巻それぞれのテーマを作曲し、フォノシート付き絵本にします。
この企画を吉田さんと立ち上げた天馬さんも、もちろん大賛成でした。子どもたちに向けて良質な作品をおくりたい、という思いは同じだったからです。
続く第2巻『キャッキャ フラメンコ』、第3巻『なきべそコンコン』、第4巻『バイバイほたる』まで、天馬さんは構成と童話を手掛けられています。
その後は、第8巻『ずっこけカンちゃん』、第13巻『サメにおわれたイルカの子』以外は、お話と構成は他の方にバトンタッチしましたが、このシリーズ絵本の出版に尽力しました。
各巻のイラストは、源田秀夫(あや秀夫)さんや、下元明子(河井ノア)さん、しいはしいくさん、など出版部の主力が担当しタツノコプロとしても力が入っていたこと分ります。
吉田さんご自身もかなりノっていて、毎回新曲を作るのも楽しんでいたそうです。
余談ですが、このフォノシートの歌い手は吉田さんの愛娘のお三方でした。子煩悩だったという吉田さんの、愛すべき一面が現れているようです。
この頃に親子共作がなされていたことには、感慨深いものがあります。(つづく)
竜の子童謡絵本『チャボとニャンクロケ』
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