あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その41
- 2023/01/29
- 06:30
第3章
■タツノコプロ出版部長として (4)
ある日、出版部の天馬さんのもとにふらっと立ち寄られた、吉田竜夫さん。
そこで吉田さんからお聞きした次作に考えているオリジナル企画は、天馬さんにとっても嬉しいものでした。
かつて描いて人気だったマンガ『少年忍者部隊月光』を、吉田さん絵物語時代の『世界少年隊』と合わせて近未来SFのヒーローものに、との構想を話されたのです。
元々『少年忍者部隊月光』の舞台は第二次世界大戦で、その戦争のさなか活躍する忍者末裔の少年少女たちが活躍する物語でした。それがテレビドラマ化される際、大人の役者が活躍する現代劇の設定に変えられました。
今度の企画では少年忍者たちが未来の世界で活躍するSFになるのですから、もっと格好良くなるはずです。
そもそも『月光』は、天馬さんの企画と構成で、吉田竜夫さんが描かれた作品でした。それがアニメで新たに生まれ変わるのです。
「社長、それはきっと面白くなりますよ」と、天馬さんも賛同しました。
この作品こそが、『科学忍者隊ガッチャマン』でした。
もちろん、鳥海尽三さんや陶山智さん、鳥海永行さん、宮本貞雄さん、中村光毅さん、大河原邦男さんなど、数多くのクリエーターがそこに結集したからこそ、出来上がった作品です。
そして最初の発想の元となった『少年忍者部隊月光』には、天馬さんの存在もありました。
その後、吉田竜夫さん率いるタツノコプロは、『新造人間キャシャーン』や、『破裏拳ポリマー』、『宇宙の騎士テッカマン』、『タイムボカン』など、順調にオリジナル作品を発信していきます。
タツノコプロが放った作品はどれもヒットし、業界でも注目されていました。
ですが、昭和52年(1977年)9月、順風満帆だと思われていたタツノコプロは激震に見舞われます。
社長である吉田さんが体調を崩して入院され、45才の若さで急逝したのです。(つづく)
『科学忍者隊ガッチャマン カラー大図鑑』(ひばり書房刊)
構成と文は、天馬さんです。
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