『九尾の狐と飛丸』研究上映会
- 2023/05/06
- 06:30
これまで幻の作品として観る事ができなかった長編『九尾の狐と飛丸』の上映会が、5月4日に銀座のTCC試写室で行われました。
『九尾の狐と飛丸』は、1968年(昭和43年)10月に公開された長編アニメーション映画です。製作は日本動画株式会社で、この映画のために立ち上げられた会社でした。
今から55年前の作品ですが、当時の大手アニメ製作会社である東映動画や虫プロダクション以外でこのようなオリジナル長編が作られ、しかもその後公開される機会がなかったことで幻の作品とされていました。
その謎に迫ったのが、『(秘)劇画 浮世絵千一夜』や『冒険少年シャダー』、パイロット版『フータくん』などを探究し、成果を同人誌として発表してきたコノシートさんでした。
そして、それをご覧になったこの作品の作画監督、杉山卓さんのご長男との出会いが、この度の上映会開催のきっかけとなりました。
杉山卓さんといえば、東映動画長編スタッフとしてそのキャリアをスタートされ、その後、テレビ動画で『ドルフィン王子』(後の『海底少年マリン』)、そして虫プロでは、『W3』や『アニマル1』にたずさわられました。
古くからのアニメファンには、徳間書店の『東映動画長編アニメ大全集』上下巻の編著や秋元文庫『テレビアニメ全集』全3巻の著者としても知られています。
今回はほかにも、杉山卓さんが作られたマツダや長野放送、ハリス「カラッペフーセンガム」のCMや円谷プロの『チビラくん』のオープニングアニメも紹介されました。
印象に残ったのは、ホンダの短編「ホンダN360」です。雪山をN360で走る青年の前に雪女が現れ冷気で襲ってくるのですが、ヒーター装置で撃退するという内容です。
この雪女というのが美女なのですが、『九尾の狐と飛丸』の玉藻にもダブリました。
初めて『九尾の狐と飛丸』を見ましたが、落ち着いた色彩で雰囲気もよく飛丸とヒロインの悲恋や平安末期の描写、炎などアクション描写など重厚なドラマは見ごたえがありました。
上映後には杉山丈彦さんから、杉山卓さんのメッセージが代読されました。この作品の監督である八木晋一は杉山さんのペンネームだったことや、当初キャラクターデザインは森やすじさんやさいとう・たかをさんにも依頼していたなど新事実が明かされました。
当日のTCC試写室入り口
コノシートさんによる解説書
杉山さんのメッセージによると、絵コンテは無く
代わりに杉山さんがレイアウトを一枚ずつ描いたそうです。
『ふしぎなメルモ』方式ですね。
- 関連記事
-
- 松本零士先生お別れの会
- 『九尾の狐と飛丸』研究上映会
- 中野サンプラザで最後の開催「資料性博覧会16」
- 久しぶりのセル画の販売・交換イベント
- 2023年春の横山光輝ファンミーティング