大塚康生さんの『道楽もの雑記帖』
- 2023/06/24
- 06:30
2021年3月15日に亡くなられた大塚康生さんの遺稿集『道楽もの雑記帖』(叶精二/編集・構成)が、5月に出版されました。
続く本文ではWEBに発表されたコラム、アメリカでのCM『ルパン三世』制作記、講演録、そして1992年に刊行された『イラストレーターの仕事・アニメーターの仕事』(わたせせいぞう・大塚康生/著)の大塚さんが執筆された「アニメーターの仕事」の再録、など盛りだくさんです。
大塚さんが東映動画の新人時代に書かれた短編アニメ企画『鎮守の森の物語』、若者へのメッセージ、最後のコーナーで紹介される様々な動物を描いたスケッチも印象的でした。
これまで大塚さんの自伝としては『作画汗まみれ』がありますが、年齢を重ねられたうえで改めてご自身の歩みを振り返られており読み応えがありました。
巻頭イラストでは、2003年に描かれた『ルパン三世 カリオストロの城』組み立てキット〔旅立ち2〕用のパッケージ画が注目でした。最初のラフからどう大塚さんが描き進めていったのか、その過程が4枚の絵で分かりました。
また1994年にルパンたちが登場するエッソのCM制作のため、アメリカで作業された際のレポートも、日米アニメーター事情の相違などを考察しておられます。
講演録「日本のアニメーションに期待すること」の中での初期東映動画の考察は、冷静でうなずけるものでした。日動出身のアニメーターに外部の作家を入れて新しい作風を生み出そうとしたことですが、後のテレビアニメ時代でも石森章太郎さんや、赤塚不二夫さん、横山光輝さん、永井豪さん、松本零士さんなど人気マンガ家作品を貪欲にアニメ化していったことにも通じる気がしました。
1992年にダイヤモンド社から出版された『イラストレーターの仕事・アニメーターの仕事』には、元々「プロの世界、仕事の魅力」とシリーズタイトルがついていました。これからこの職業を目指す若者向けの仕事紹介と入門書のような書籍です。刊行当時も読んで印象的でしたので、こういう形の再録はうれしいことでした。
大塚さんが遺されたメッセージをまとめて読むことができる、貴重な一冊です。
大塚康生『道楽もの雑記帖』(玄光社刊)
こうして『カリオストロの城』の原画、修正原画が紹介されると、
次は同作の原画集出版も期待されますね。