アニメブーム時の公式ファンクラブ事情⑤

■アニメブーム以前　その４

　当時「虫プロダクション友の会」に入会すると、会報『鉄腕アトムクラブ』の送付はもちろんのこと、会員証やバッチ、ブロマイドなど、特典も盛りだくさんでした。
　また、発足当時は自分で４人の友人を誘って５人まとめて入会申し込みすると、「グループ・リーダー」となり、更にワッペンとセル画までもらえたのです。

　この頃は、まだセル画という名称も一般的ではなかったのでしょう。「鉄腕アトム動画セルロイド」をお送りします、と記事には紹介されていました。

　その後セル画プレゼントは、入会した人にはプレゼントされる特典になりました。希望者も多かったのでしょう。当時もらったセル画は、皆さん大事に持っていらっしゃるのでしょうか。

　『鉄腕アトムクラブ』には、星新一さんや、豊田有恒さん、小松左京さんなど、手塚さんとお付き合いのあったＳＦ作家の方々も執筆していました。手塚治虫さんご自身も『鉄腕アトム』を描いていましたが、やはりスケジュールが厳しかったのか、だんだん代筆が増えていきます。
　作者が虫プロダクション名義になっていた作品は当初、北野英明さんが描いていたそうです。しかも、北野さんが多忙で執筆できなかった時には、ピンチヒッターとして金山明博さんと荒木伸吾さんも『鉄腕アトム』の執筆に駆り出されたことがあったそうです。マンガ・アニメファンとしても、これは聞き逃すことのできないエピソードです。後に荒木さんは「代筆とはいえ、手塚先生の『アトム』を描けたことは嬉しかったね」と当時を思い出して話してくれたことを思い出します。

　そんな代作が続いても、当時は手塚さんの人気は高く創刊から２年目の１９６６年（昭和４１年）４月号には、会員数８万人突破という誇らしげな告知が掲載されました。
　元々は手塚治虫さんご自身のファンクラブという側面もあったため、これだけの人気だったのでしょう。

　当時としては、日本で唯一の公式アニメファンクラブであり、その規模も最大だったことが分かります。その勢いもあったのか、翌月発行の５月号から、『鉄腕アトムクラブ』は書店でも発売されるようになりました。（つづく）



『鉄腕アトムクラブ』１９６６年４月号　 グループリーダー募集ページ
ついに会員８万人突破！と誇らしげに書かれてます