アニメブーム時の公式ファンクラブ事情⑱

■公式ファンクラブ時代の終焉

　アニメブームに花盛りだった、各プロダクション主導による公式アニメファンクラブ。しかし、そんな状況も１９７８年（昭和５３年）のアニメ専門誌『アニメージュ』が創刊されたことにより一転してました。

　結局ファンの欲しい情報は、月刊誌ということで会報より早く掲載されますし、カラーページも多く、なにより本職の編集者が携わった誌面と、いくら制作会社サイドの人間とはいえシロウトが編集する会報とは、元々勝負にならなかったのでしょう。会社側が編集することで、あちらこちらに気を使いより自主規制なども働いていたかもしれません。

　作品が増えて様々な情報がどんどん入りだすと、アニメファンも一つの作品一つのプロダクションに肩入れするのではなく、志向も多様化していきます。そしてどんな人気作品であっても、流行り廃りもありました。
　そうなると、最新情報がいち早く掲載され、しかもインタビューなど記事内容が濃い『アニメージュ』などのアニメ雑誌には太刀打ちできるはずもなかったのです。

アニメファン自体も世代が変わり、黎明期の情報を自分達で探すしかなかった世代から、アニメ雑誌や出版物が当たり前のように存在する世代に入れ替わったことも理由の一つでしょう。わざわざファンクラブに入って自ら活動しなくても、周囲に趣味を共有する友人はいますし、情報はアニメ雑誌からも知ることができたのです。

　当初は、各プロダクションがそれぞれの思惑を持って始め、ファンに歓迎された公式ファンクラブでした。しかし、その後台頭してくるアニメ雑誌などに交代する形で、徐々にその役目を終えて退場していきました。
　今やインターネットの登場で状況はさらに変化し、ネット動画で新作も見ることができますし、様々な情報も探すことができます。

　ただ,この頃の会報などを改めて読み返しますと、投稿コーナーなどに当時のアニメファンたちのエネルギーを感じます。そして毎号送られてくる会報を楽しみにしていた、あの「アニメブーム」の頃を懐かしく思い出すのです。（了）


再建された新生虫プロの公式ファンクラブ会報『虫のとも』創刊号（１９７８年４月発行）と
「うる星やつらファンクラブ」から、発展した「キティ・アニメーション・サークル」の
会報「Kitty Press」創刊号（１９８６年４月発行）