国際映画社が駆け抜けた時代(その4)
- 2014/05/18
- 10:34
『銀河旋風ブライガー』に登場するサブキャラクターに対する違和感は、色指定にもありました。
メインであるJ9メンバーたちは格好良く決まっていたのですが、各話に登場するゲストキャラや敵のロボットやメカになるとみんな沈みがちな単調な色彩で、それぞれ作品世界に合っているとは決してお世辞にも思えませんでした。
これは、どうやら当初は、絵コンテを日本側の演出家が克明に描き、それを受け取った現地の作画監督が絵コンテからゲストキャラクターを起こし、そのままデザインしていたことも理由のようです。しかも色指定や彩色、背景までも向こうの制作会社が担当していたようでした。
もちろん、原画などはいったん日本側に送られてチェックをする体制ではありました。ただ菊地城二さん以外は海外の作画監督でしたから、表情や細かい演技のニュアンスなどに関しては、意思の疎通はなかなか難しいことだったようです。
当然ですが、育った国や環境、文化、そして世代すらも元々違ったのですから、それも無理もない話です。
演出からの原画リテイク指示も、今では決して珍しくないのですが、演出家がまず日本語で書き、それを向こうの言葉に訳して送っていました。このような作業形態では、そもそも「J9シリーズ」で目指していた、若者のセンスのいいノリを出すことはかなり困難なことだったのではないでしょうか。
極端な話、絵が出来上がってしまった撮影済みのフィルムのカッティング編集や、アフレコ時の演出でしか微妙な雰囲気の芝居などを加えていくことはできません。
そんな中でも、声優さんのアドリブがキャラクターの性格に反映されて生きていました。そのアドリブや毎回アフレコ後の打ち上げでの声優さんたちの生の会話を聞いたシナリオライターの山本優さんが、また次の脚本に生かすという、相乗効果も生まれていったのです。
チーフディレクターの四辻たかおさんも、以前CMの演出をしていた経験もあり、とにかくテンポのいいフィルム編集を心がけていたそうです。山本正之さんの手掛けた音楽もパンチが効いていて、作品の世界作りには欠かせない重要な要素でした。
『ブライガー』といえば、とにかく金田伊功さんのオープニングが強烈すぎて、いつもそればかりが取り上げられる感もありますが、決してそれだけではありません。
確かに作画的には突出した回はありませんでした。ただ、毎回使用された高橋朝雄さんが描かれた変形バンクシーンの作画も格好良かったですし、21話「誓いのWネック」などは、脚本も音楽好きのチーフディレクター・四辻たかおさんが手掛けられた回です。ギターが物語の鍵となるエピソードなのですが、肝心の演奏シーンで絵と音楽が合っていないところなどは、もはやご愛嬌とお許しください。
ストーリーもいかにも『ブライガー』の世界で、まだ見てない方はこのエピソードも機会があればご覧いただきたいと思います。物語の始まりから流れてくるキッドの奏でる格好良いギターソロも、聴きどころのひとつです。まさかWネックギターがロボットアニメに出てくるなんて、ゲストキャラのロニー・ペイジのモデルであろうレッドツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジだって思いもしなかったでしょう。
シリーズ中ごろのカーメン・カーメン登場から、徐々に力を増し対抗していた他のコネクションを傘下に置き、台頭してくるヌビア・コネクション。そして、カーメンによる壮大な陰謀、木星を破壊しようとする「大アトゥーム計画」を止めようとするJ9チーム。その戦いが激化していくラストに向けての緊迫感は、それまで若者たちの気ままな姿がしっかり描かれていたからこそ、より際立っていました。
メンバーたちのキザで軽い上っ面だけじゃない、それぞれの背負っているシリアスな過去や思いがあったからこそ、よりJ9チームの本気も際立ちました。これこそが、山本優さんが『ブライガー』で描きたかった、タテマエだけじゃない本音のヒーロー像だったのでしょう。(続く)

『銀河旋風ブライガー』原画とレイアウトです
メインであるJ9メンバーたちは格好良く決まっていたのですが、各話に登場するゲストキャラや敵のロボットやメカになるとみんな沈みがちな単調な色彩で、それぞれ作品世界に合っているとは決してお世辞にも思えませんでした。
これは、どうやら当初は、絵コンテを日本側の演出家が克明に描き、それを受け取った現地の作画監督が絵コンテからゲストキャラクターを起こし、そのままデザインしていたことも理由のようです。しかも色指定や彩色、背景までも向こうの制作会社が担当していたようでした。
もちろん、原画などはいったん日本側に送られてチェックをする体制ではありました。ただ菊地城二さん以外は海外の作画監督でしたから、表情や細かい演技のニュアンスなどに関しては、意思の疎通はなかなか難しいことだったようです。
当然ですが、育った国や環境、文化、そして世代すらも元々違ったのですから、それも無理もない話です。
演出からの原画リテイク指示も、今では決して珍しくないのですが、演出家がまず日本語で書き、それを向こうの言葉に訳して送っていました。このような作業形態では、そもそも「J9シリーズ」で目指していた、若者のセンスのいいノリを出すことはかなり困難なことだったのではないでしょうか。
極端な話、絵が出来上がってしまった撮影済みのフィルムのカッティング編集や、アフレコ時の演出でしか微妙な雰囲気の芝居などを加えていくことはできません。
そんな中でも、声優さんのアドリブがキャラクターの性格に反映されて生きていました。そのアドリブや毎回アフレコ後の打ち上げでの声優さんたちの生の会話を聞いたシナリオライターの山本優さんが、また次の脚本に生かすという、相乗効果も生まれていったのです。
チーフディレクターの四辻たかおさんも、以前CMの演出をしていた経験もあり、とにかくテンポのいいフィルム編集を心がけていたそうです。山本正之さんの手掛けた音楽もパンチが効いていて、作品の世界作りには欠かせない重要な要素でした。
『ブライガー』といえば、とにかく金田伊功さんのオープニングが強烈すぎて、いつもそればかりが取り上げられる感もありますが、決してそれだけではありません。
確かに作画的には突出した回はありませんでした。ただ、毎回使用された高橋朝雄さんが描かれた変形バンクシーンの作画も格好良かったですし、21話「誓いのWネック」などは、脚本も音楽好きのチーフディレクター・四辻たかおさんが手掛けられた回です。ギターが物語の鍵となるエピソードなのですが、肝心の演奏シーンで絵と音楽が合っていないところなどは、もはやご愛嬌とお許しください。
ストーリーもいかにも『ブライガー』の世界で、まだ見てない方はこのエピソードも機会があればご覧いただきたいと思います。物語の始まりから流れてくるキッドの奏でる格好良いギターソロも、聴きどころのひとつです。まさかWネックギターがロボットアニメに出てくるなんて、ゲストキャラのロニー・ペイジのモデルであろうレッドツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジだって思いもしなかったでしょう。
シリーズ中ごろのカーメン・カーメン登場から、徐々に力を増し対抗していた他のコネクションを傘下に置き、台頭してくるヌビア・コネクション。そして、カーメンによる壮大な陰謀、木星を破壊しようとする「大アトゥーム計画」を止めようとするJ9チーム。その戦いが激化していくラストに向けての緊迫感は、それまで若者たちの気ままな姿がしっかり描かれていたからこそ、より際立っていました。
メンバーたちのキザで軽い上っ面だけじゃない、それぞれの背負っているシリアスな過去や思いがあったからこそ、よりJ9チームの本気も際立ちました。これこそが、山本優さんが『ブライガー』で描きたかった、タテマエだけじゃない本音のヒーロー像だったのでしょう。(続く)

『銀河旋風ブライガー』原画とレイアウトです
- 関連記事
-
- 国際映画社が駆け抜けた時代(その6)
- 国際映画社が駆け抜けた時代(その5)
- 国際映画社が駆け抜けた時代(その4)
- 国際映画社が駆け抜けた時代(その3)
- 国際映画社が駆け抜けた時代(その2)
- テーマ:懐かしいアニメ作品
- ジャンル:アニメ・コミック
- カテゴリ:国際映画社
- CM:0
- TB:0