■ セル画
アニメブームになって、一番人気が出たアニメグッズといえば、やはりセル画でした。
アニメブーム以前、セル画はスタッフの知り合いや、デパート催事の「マンガ展」など、限られた機会を通じてしか入手出来ませんでした。その頃は、まだセル画という存在自体も一部のマニアにしか認識されていなかったかもしれません。
それが、アニメの人気が高まるとともにセル画はアニメグッズとして販路が出来、流通し始めたのです。1977年(昭和52年)の劇場版『
宇宙戦艦ヤマト』の公開時、先着のファンに限定で配布されたのが、セル画が一般へ拡散した始まりと言われています。
大手制作会社の東映動画もいち早くセル画を商品化し、スタジオ内ショップでの販売や、伝説のショップである“まんが画廊”にも卸しました。また大手ショップのアニメックなども、セル画の販売を始めます。
ですがセル画は数も限られていたため、他のショップも扱ってはいましたが、販売会などですぐ売り切れる人気商品でした。そのため、最初の頃は地方への通販は行われませんでした。
東映は、全国各地の映画館にもアニメショップを続々開店させていき、それまで都内のファンにしか入手が難しかったセル画を、地方のファンにも供給してくれるようになりました。
これによって、地方のファンでも近場のアニメショップで、セル画を購入することが可能になったのです。
確かに当時から人気だった『
宇宙戦艦ヤマト』シリーズや『機動戦士ガンダム』などは、地方では入手できません。ですから地元の東映系のアニメショップで、『
グランプリの鷹』や『
スタージンガー』など、好きなテレビアニメのセル画を入手出来たときは、感動でした。色鮮やかなセルカラーで塗られたセル画と手描きの背景の美しさは、テレビの画面で見る以上に素晴らしいものでした。
やがて他の制作会社である日本アニメや、タツノコプロ、東京ムービーも、ファンクラブを通じてセル画を通販し始めます。当時あったアニメショップ「あいどる」や「マスコット」も、セル画の通販を手がけてくれるようになりました。
こうして、通販が行われることにより、地方のファンも上京してアニメショップをまわらなくても、徐々に好きな作品のセルを入手できるようになりました。また人気作品の劇場映画では、封切日に徹夜して並ぶと、地方の映画館でも先着何名かにセル画ももらえました。
今では、アニメの制作はデジタル化が進み、もはや現場ではセルは使われていません。いくら新作が気に入っても、その作品の制作素材であるセル画は存在しないのです。
ただアニメブームの初期、地元のショップでフィルムに使用されたセル画を手にできた喜びは、35年以上経った今も忘れることができません。(了)
地方の東映系アニメショップで初期に販売されていた作品のセル画。
左上から時計回りに『花の子ルンルン』、『アローエンブレム グランプリの鷹』、
『SF西遊記 スタージンガー』、『闘将ダイモス』です。
今では、セル画が入れられていた厚紙の額のほうが珍しくなりました。
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