藤脇邦夫さんの新刊『出版アナザーサイド』 その2
- 2016/01/17
- 06:25
著者である藤脇さんは、『ザッパ・ボックス』(監修/八木康夫)のようなマニアックな音楽本のほかに、『キューブリック』(ミシェル・シマン著 内山一樹/監訳)や、『デニス・ホッパー 狂気からの帰還』(エレナ・ロドリゲス著 綾部修/訳)、『ヒチコック&メイキング・オフ・サイコ』(スティーヴン・レベロ著 岡山 徹/訳)など、ディープな映画本の刊行にも関わっておられます。本書にはそれらの仕掛け人ならではの、印象的な記述がありました。
1980年頃から、映画本の作り方が変わってきたそうです。ビデオ時代に入り誰もが映画を所有できるようになると、映画についての個人的な思い込みによる評論や解説は、まったく役に立たず不要になる、と。しかもDVD時代に入ると、メイキング映像や詳細なブックレットが付くのです。
この事は、アニメ関連出版にも当てはまるでしょう。確かに、1977年のアニメブーム以降、「ロマンアルバム」シリーズ(徳間書店)や「ファンタスティック・コレクション」シリーズ(朝日ソノラマ)、そして講談社、少年画報社、小学館など、各出版社が競ってアニメムックを出版する時期がありました。「ロマンアルバム」などは、ほぼ毎月のように新刊が発売されていたのです。
ビデオの無かった頃は、再放送でしか見ることのできないアニメを、ムックで手元に置こうとしていたのです。かつての名作アニメを特集したムックを、この当時むさぼるように読んでいたことを覚えています。
ですが1980年代のビデオ時代に入ると、徐々にマニアックなムックは減少していきました。
ファンは好きな作品を求めて、書籍やムック、グッズを購入していましたが、ビデオで作品が手元に入れば確かに作品への飢餓感は、もはや満たされていたということなのでしょう。
より詳しい設定資料などの公開や、スタッフへの取材などを求めるコアなファンは、実はそれほど多くないのかもしれません。
今や、ネットなどで動画もより気軽に見ることの出来る時代です。本もますます売れない状況も続いているようです。アニメ関連の出版物も今後どういう方向に進んでいくのか、この『出版アナザーサイド』を読んで、いろいろと考えさせられました。
そして出版について示唆に富む視点が豊富な藤脇さんの今後の著作も、本好きの一人として楽しみです。(了)

『出版アナザーサイド ある始まりの終わり 1982-2015』(本の雑誌社刊)
1980年頃から、映画本の作り方が変わってきたそうです。ビデオ時代に入り誰もが映画を所有できるようになると、映画についての個人的な思い込みによる評論や解説は、まったく役に立たず不要になる、と。しかもDVD時代に入ると、メイキング映像や詳細なブックレットが付くのです。
この事は、アニメ関連出版にも当てはまるでしょう。確かに、1977年のアニメブーム以降、「ロマンアルバム」シリーズ(徳間書店)や「ファンタスティック・コレクション」シリーズ(朝日ソノラマ)、そして講談社、少年画報社、小学館など、各出版社が競ってアニメムックを出版する時期がありました。「ロマンアルバム」などは、ほぼ毎月のように新刊が発売されていたのです。
ビデオの無かった頃は、再放送でしか見ることのできないアニメを、ムックで手元に置こうとしていたのです。かつての名作アニメを特集したムックを、この当時むさぼるように読んでいたことを覚えています。
ですが1980年代のビデオ時代に入ると、徐々にマニアックなムックは減少していきました。
ファンは好きな作品を求めて、書籍やムック、グッズを購入していましたが、ビデオで作品が手元に入れば確かに作品への飢餓感は、もはや満たされていたということなのでしょう。
より詳しい設定資料などの公開や、スタッフへの取材などを求めるコアなファンは、実はそれほど多くないのかもしれません。
今や、ネットなどで動画もより気軽に見ることの出来る時代です。本もますます売れない状況も続いているようです。アニメ関連の出版物も今後どういう方向に進んでいくのか、この『出版アナザーサイド』を読んで、いろいろと考えさせられました。
そして出版について示唆に富む視点が豊富な藤脇さんの今後の著作も、本好きの一人として楽しみです。(了)

『出版アナザーサイド ある始まりの終わり 1982-2015』(本の雑誌社刊)
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