アニメ文庫本の興亡史 ④

■ソノラマ文庫（朝日ソノラマ）　その３

　「ソノラマ文庫」では、１９７７年（昭和５２年）スタジオぬえの高千穂遥さんによる書き下ろし長編『クラッシャージョウ　連帯惑星ピザンの危機』を出版しました。「クラッシャージョウ」は以降、ソノラマ文庫の人気シリーズとなります。

　この作品の挿絵は、『勇者ライディーン』や『機動戦士ガンダム』でおなじみの安彦良和さんが手掛けていました。人気アニメーターに小説の挿絵を依頼したことでも、先駆け的な作品でした。アニメファンにも『クラッシャージョウ』シリーズは人気となり、後にアニメ化もされています。

　テレビアニメ黎明期から活躍されていたベテラン脚本家の辻真先さんも、ソノラマ文庫から少年向けミステリー小説『死に神はあした来る』や『仮題・中学殺人事件』を刊行され、その後ミステリー作家となられました。
　大ヒットとなった『機動戦士ガンダム』や、『伝説巨人イデオン』の小説版を、総監督である富野喜幸（現・由悠季）さんもソノラマ文庫で執筆しています。

　アニメ演出家としては、他にも『宇宙戦艦ヤマト』のアニメーションディレクターだった石黒昇さんは、石津嵐さんの小説『宇宙海賊船シャーク』など「キャプテン・シャーク」シリーズの表紙や挿絵を担当されています。
　『科学忍者隊ガッチャマン』総監督だった鳥海永行さんによる小説も、『フルムーン伝説インドラ』や『ＬＩＬＹ－Ｃ.Ａ.Ｔ』などが、続々と刊行されました。

　表紙イラストや挿絵では、『科学忍者隊ガッチャマン』の作画監督の宮本貞雄さんや、『超時空要塞マクロス』のキャラクターデザインを担当された美樹本晴彦さん、『うる星やつら』（原作／高橋留美子）のキャラクターデザイナー・高田明美さんなどの方々に依頼していました。

　アニメファンに人気の著者やアーティストを、ソノラマ文庫では積極的に起用していたのです。
　ソノラマ文庫のヒット作となった菊池秀行さんの『吸血鬼ハンターＤ』や、『魔界都市〈新宿〉』、そして斉藤英一朗さんの「ハイスピード・ジェシー」シリーズなどは、その後アニメ化もされています。

　「ソノラマ文庫」は、原作やノベライズなどアニメに近接する小説を多数出版してくれた、ファンにはなじみ深いシリーズでした。（つづく）


ソノラマ文庫『仮題・中学殺人事件』（辻真先／著）、
『宇宙海賊船シャーク』（石津嵐／著）、
『クラッシャージョウ　連帯惑星ピザンの危機』（高千穂遙／著）、
『フルムーン伝説インドラ〈前編〉』（鳥海永行／著）