トリスタン・ブルネ著『水曜日のアニメが待ち遠しい』
- 2016/06/29
- 06:43
トリスタン・ブルネ著『水曜日のアニメが待ち遠しい フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす』(誠文堂新光社刊)を読みました。フランスにおける、日本産アニメ受容の貴重な体験史です。
1976年生まれでの著者は、お兄さんもいたことで1978年フランスで大ブームとなった『UFOロボ グレンダイザー』(Goldork)のことも覚えています。
その頃のフランスの小学校は、水曜日は休みでした。そんな日に放送されるアニメ番組が、子ども達には楽しみだったのです。ただ当時はテレビ局は2局しかなかったうえ、子ども向けのアニメも『トムとジェリー』や『チキチキマシン猛レース』など、アメリカ製のカートゥーンがメインでした。
その時間帯に対抗するため、もう一方のライバル局が企画したのが、『グレンダイザー』の放映だったのです。
フランスの子どもたちは、初めて見るハードでドラマチックな作品世界に、日本製だとも知らず熱狂したのです。しかもこの作品には、子どもたちをさらに虜にするもうひとつの理由がありました。
日本と同じように、現地でも超合金が発売されたのです。ずっしりとした超合金ロボットを持った子どもたちは、日本の子どもたちと同様にさらに作品の魅力に取り込まれたことでしょう。
この成功を受けて、その後『キャンディキャンディ』(Candy)や、『宇宙海賊キャプテンハーロック』(Albator)などが放映され、こちらも大人気となったそうです。
著者が分析した『グレンダイザー』の成功の理由はとても興味深いものです。登場人物それぞれの名前を惑星の名前として無国籍とし、宇宙人デューク・フリードと地球人が仲間となる関係も、当時の移民とフランス人の関係性にシンクロしていたというのです。それゆえコミュニティの違うフランス人と移民も、子ども同士では同じ話題で話すことができたこともあったのでしょう。
著者世代は、日本製とは意識もせずアニメに子どもの頃から親しんでいましたが、その後1988年頃には『ドラゴンボール』(Dragonboll)や、『Dr.スランプ アラレちゃん』(Professeur Slump)、『星闘士星矢』(Les chevaliers duodiaque)、『うる星やつら』(Lamu)、『めぞん一刻』(Juliette,jetaime)などが、大ヒットします。これらの作品では日常生活なども物語の中で描かれ、日本製であることがより明確になっていました。
そしてあまりにテレビに氾濫しすぎた日本製アニメに対し、文化侵略としてパッシングも始まり、その後日本製アニメの放映は終息していきました。
そういえば、荒木伸吾さんは生前、「フランスの人たちは、いつも歓迎してくれるんですよ」と嬉しそうにおっしゃっていました。あちらでも『グレンダイザー』から、『ベルサイユのばら』、『ユリシーズ31』、そして『星闘士星矢』など、華麗な荒木さんの作画に魅了されたファンも多かったのでしょう。
現在でも『NARUTO ナルト』などが人気の同国ですが、その歴史を体験してきた著者がまとめられた本書は、とても興味深いものでした。
なかでも、「クールジャパン」という言葉へなんとなく感じる違和感と同様、アニメと出会った時代によって世代間の思いに違いがあるということなども、いろいろと考えさせられました。

TRISTAN BRUNET著『水曜日のアニメが待ち遠しい』(誠文堂新光社刊)
本書には翻訳者のクレジットがありません。
著者は、日本語で書かれたということでしょう。
1976年生まれでの著者は、お兄さんもいたことで1978年フランスで大ブームとなった『UFOロボ グレンダイザー』(Goldork)のことも覚えています。
その頃のフランスの小学校は、水曜日は休みでした。そんな日に放送されるアニメ番組が、子ども達には楽しみだったのです。ただ当時はテレビ局は2局しかなかったうえ、子ども向けのアニメも『トムとジェリー』や『チキチキマシン猛レース』など、アメリカ製のカートゥーンがメインでした。
その時間帯に対抗するため、もう一方のライバル局が企画したのが、『グレンダイザー』の放映だったのです。
フランスの子どもたちは、初めて見るハードでドラマチックな作品世界に、日本製だとも知らず熱狂したのです。しかもこの作品には、子どもたちをさらに虜にするもうひとつの理由がありました。
日本と同じように、現地でも超合金が発売されたのです。ずっしりとした超合金ロボットを持った子どもたちは、日本の子どもたちと同様にさらに作品の魅力に取り込まれたことでしょう。
この成功を受けて、その後『キャンディキャンディ』(Candy)や、『宇宙海賊キャプテンハーロック』(Albator)などが放映され、こちらも大人気となったそうです。
著者が分析した『グレンダイザー』の成功の理由はとても興味深いものです。登場人物それぞれの名前を惑星の名前として無国籍とし、宇宙人デューク・フリードと地球人が仲間となる関係も、当時の移民とフランス人の関係性にシンクロしていたというのです。それゆえコミュニティの違うフランス人と移民も、子ども同士では同じ話題で話すことができたこともあったのでしょう。
著者世代は、日本製とは意識もせずアニメに子どもの頃から親しんでいましたが、その後1988年頃には『ドラゴンボール』(Dragonboll)や、『Dr.スランプ アラレちゃん』(Professeur Slump)、『星闘士星矢』(Les chevaliers duodiaque)、『うる星やつら』(Lamu)、『めぞん一刻』(Juliette,jetaime)などが、大ヒットします。これらの作品では日常生活なども物語の中で描かれ、日本製であることがより明確になっていました。
そしてあまりにテレビに氾濫しすぎた日本製アニメに対し、文化侵略としてパッシングも始まり、その後日本製アニメの放映は終息していきました。
そういえば、荒木伸吾さんは生前、「フランスの人たちは、いつも歓迎してくれるんですよ」と嬉しそうにおっしゃっていました。あちらでも『グレンダイザー』から、『ベルサイユのばら』、『ユリシーズ31』、そして『星闘士星矢』など、華麗な荒木さんの作画に魅了されたファンも多かったのでしょう。
現在でも『NARUTO ナルト』などが人気の同国ですが、その歴史を体験してきた著者がまとめられた本書は、とても興味深いものでした。
なかでも、「クールジャパン」という言葉へなんとなく感じる違和感と同様、アニメと出会った時代によって世代間の思いに違いがあるということなども、いろいろと考えさせられました。

TRISTAN BRUNET著『水曜日のアニメが待ち遠しい』(誠文堂新光社刊)
本書には翻訳者のクレジットがありません。
著者は、日本語で書かれたということでしょう。
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