大塚英志著『二階の住人とその時代 ~転換期のサブカルチャー私史』
- 2016/07/03
- 06:52
1977年(昭和52年)から1978年(昭和53年)にかけて、爆発的に盛り上がったアニメブーム。そのブームの牽引役を担ったひとつに、『ロマンアルバム』や『アニメージュ』などの徳間書店の出版物がありました。
その頃の同社の編集部事情を振り返った、大塚英志さんの『二階の住人とその時代 ~転換期のサブカルチャー私史』(星海社新書)が刊行されました。
これはスタジオジブリが発行している『熱風』に連載されたものを加筆修正して、まとめたものだそうです。 マンガ原作者、評論家として有名な大塚さんは、1980年代『漫画ブリッコ』(白夜書房刊)や『プチアップルパイ』(徳間書店アニメージュ・コミックス)などで、美少女コミック・ブームを起こされた敏腕の編集者でもありました。
そんな大塚さんが徳間書店時代を回想したのですから、これは面白い内容でした。『アニメージュ』創刊前夜から、『ロマンアルバム』、『コミックリュウ』、『ザ・モーションコミック』など、その誕生秘話と、それぞれの媒体に中心的役割を担った尾形英夫さん、鈴木敏夫さん、校條満さんなどの名物編集者にスポットをあてています。
なにより、『アニメージュ』創刊時の尾形さんの意向や、その命によりアニメファンの女子高生にヒアリングを繰り返した鈴木敏夫さん。そして、その女子高生のなかに、マンガ家・浪速愛さんがいたことなど、とても興味深く読みました。
『アニメージュ』が、何故それまでの日本サンライズ作品重視から、宮崎駿さん・高畑勲さん路線に舵を切ったのか、そのことがゆくゆくはスタジオジブリの誕生につながり、また日本サンライズ作品推しの路線は、角川書店の『ニュータイプ』に移行したことなどが、改めて分かりました。
当時新橋にあった徳間書店の二階の編集部には、特撮系のライターや、アニメファン出身者、『アサヒ芸能』出身の編集者など、多彩な才能が集結していて、アニメ関係の出版物を手掛けていたのでしょう。
大塚さんは、最後にこの二階育ちのライターとして、原口正宏さんを紹介しています。ここで、もう一人『アニメージュ』出身のライター、小黒祐一郎さんも取り上げてくれれば良かったと感じました。
データを研究し学求的アプローチでアニメに向かう原口さんと、よりマニアックな視点で作品やスタッフに向かい続ける小黒さん。この二人こそが鈴木敏夫さんたちが作った『アニメージュ』の遺伝子を、もっとも多く受け継いでいると思うのです。
また本文では、石ノ森章太郎ファンクラブの重鎮で、日本初のまんが大会などを開催した個人的にも懐かしい青柳誠さんの名前も出てきたのは嬉しいことでした。
以前から青柳さんには、折に触れ『ロマンアルバム』編集時のこぼれ話をいろいろ伺っていました。私も中学生だった頃、『アニメージュ』や『ロマンアルバム』などの新刊が書店に並ぶことを、毎月首を長くして待っていた一人です。
今から40年近く前、『アニメージュ』などアニメ出版物が元気だった時代を覚えている人には、懐かしく興味深い一冊です。

『二階の住人とその時代 ~転換期のサブカルチャー私史』(星海社新書)
その頃の同社の編集部事情を振り返った、大塚英志さんの『二階の住人とその時代 ~転換期のサブカルチャー私史』(星海社新書)が刊行されました。
これはスタジオジブリが発行している『熱風』に連載されたものを加筆修正して、まとめたものだそうです。 マンガ原作者、評論家として有名な大塚さんは、1980年代『漫画ブリッコ』(白夜書房刊)や『プチアップルパイ』(徳間書店アニメージュ・コミックス)などで、美少女コミック・ブームを起こされた敏腕の編集者でもありました。
そんな大塚さんが徳間書店時代を回想したのですから、これは面白い内容でした。『アニメージュ』創刊前夜から、『ロマンアルバム』、『コミックリュウ』、『ザ・モーションコミック』など、その誕生秘話と、それぞれの媒体に中心的役割を担った尾形英夫さん、鈴木敏夫さん、校條満さんなどの名物編集者にスポットをあてています。
なにより、『アニメージュ』創刊時の尾形さんの意向や、その命によりアニメファンの女子高生にヒアリングを繰り返した鈴木敏夫さん。そして、その女子高生のなかに、マンガ家・浪速愛さんがいたことなど、とても興味深く読みました。
『アニメージュ』が、何故それまでの日本サンライズ作品重視から、宮崎駿さん・高畑勲さん路線に舵を切ったのか、そのことがゆくゆくはスタジオジブリの誕生につながり、また日本サンライズ作品推しの路線は、角川書店の『ニュータイプ』に移行したことなどが、改めて分かりました。
当時新橋にあった徳間書店の二階の編集部には、特撮系のライターや、アニメファン出身者、『アサヒ芸能』出身の編集者など、多彩な才能が集結していて、アニメ関係の出版物を手掛けていたのでしょう。
大塚さんは、最後にこの二階育ちのライターとして、原口正宏さんを紹介しています。ここで、もう一人『アニメージュ』出身のライター、小黒祐一郎さんも取り上げてくれれば良かったと感じました。
データを研究し学求的アプローチでアニメに向かう原口さんと、よりマニアックな視点で作品やスタッフに向かい続ける小黒さん。この二人こそが鈴木敏夫さんたちが作った『アニメージュ』の遺伝子を、もっとも多く受け継いでいると思うのです。
また本文では、石ノ森章太郎ファンクラブの重鎮で、日本初のまんが大会などを開催した個人的にも懐かしい青柳誠さんの名前も出てきたのは嬉しいことでした。
以前から青柳さんには、折に触れ『ロマンアルバム』編集時のこぼれ話をいろいろ伺っていました。私も中学生だった頃、『アニメージュ』や『ロマンアルバム』などの新刊が書店に並ぶことを、毎月首を長くして待っていた一人です。
今から40年近く前、『アニメージュ』などアニメ出版物が元気だった時代を覚えている人には、懐かしく興味深い一冊です。

『二階の住人とその時代 ~転換期のサブカルチャー私史』(星海社新書)
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