アニメ文庫本の興亡史 ⑳

■　アニメージュ文庫（徳間書店）その１

　１９７８年（昭和５３年）の創刊以来アニメブームを牽引してきた、アニメ専門誌の『アニメージュ』。その発行元である徳間書店も、いよいよアニメ文庫市場へ本格的に乗り出します。
　創刊から４年を経た、１９８２年（昭和５７年）１２月のことでした。

　それまでも、安彦良和さんの執筆した小説『シアトル喧嘩エレジー』や、富野喜幸（現・由悠季）さんの自伝『だから僕は』などのアニメ系の書籍を出版していた同社です。

　「アニメージュ文庫」の第一弾として『アニメージュ』誌の人気連載をまとめた大塚康生さんの自伝ノンフィクション『作画汗まみれ』や、フィルムをふんだんに紹介しミニロマンアルバムのような編集の『セロ弾きのゴーシュ』。　首藤剛志さんの書き下ろしノベライズ、『戦国魔神ゴーショーグン』。
　岬兄悟さんによる『宇宙戦艦ヤマト　完結編』のノベライス、そして藤川桂介さんがシリーズ構成を担当していた作品を自ら小説化した書き下ろし『六神合体ゴッドマーズ　十七歳の伝説』（原作／横山光輝）など、一挙５冊を同時発売したのです。　

　同時にアニメ絵の表紙の新刊が５冊書店の文庫コーナーに並んでいる様は壮観で、アニメファンとしても誇らしい気持ちでした。ただ実際には全部を買えるわけもなく、とにかくまず大塚さんの『作画汗まみれ』を購入し、その後こつこつと買い揃えていったことを思い出します。

　すでにこの頃の『アニメージュ』は、連載された記事など書籍化できるコンテンツのストックもある程度揃っていたのでしょう。

　また「アニメージュ文庫」創刊の前年１９８１年（昭和５６年）より、本誌では宮崎駿さんの『「未来少年コナン」第１話絵コンテ』や、『スタジオぬえ　ＭＥＣＨＡＭＡＫＩＮＧ』、『安彦良和デザインノート』など、コンスタンスに文庫サイズの付録を付けていました。
　それぞれの付録の内容も、本誌と同じくらい情報を詰め込んだものでした。
　もしかしたら、編集部はこの付録で文庫創刊へのトライアルを続けていたのかもしれません。（つづく）


徳間書店「アニメージュ文庫」『作画汗まみれ』（大塚康生／著）、
『セロ弾きのゴーシュ』（原作／宮沢賢治　監督／高畑勲）、
『六神合体ゴッドマーズ　十七歳の伝説』（原作／横山光輝　ノベライズ／藤川桂介）、
『増補改訂版　だから僕は…』（富野由悠季／著）