アニメ文庫本の興亡史 ㉓

■　角川文庫（角川書店）その２

　角川映画では、『犬神家の一族』（原作／横溝正史）や『野生の証明』（原作／森村誠一）、『時をかける少女』（原作／筒井康隆）などの実写映画のほか、『幻魔大戦』（原作／平井和正・石森章太郎）や『カムイの剣』（原作／矢野徹）など、アニメでも劇場版大作を制作しました。

　この当時は、まだアニメ専門誌『ニュータイプ』も創刊されておらず、同社もアニメ関連の出版にはそれほど積極的ではありません。角川文庫でのラインナップも、あくまで他の角川映画作品と同様の扱いでした。

　ただ『カムイの剣』（矢野徹／著）や『時空の旅人』（原題「とらえらえたスクールバス」）（眉村卓／著）など原作のカバーを、劇場公開時に合わせてアニメ版の装丁にしてくれたのは、アニメファンにとってうれしいことでした。　

　その後、角川文庫でもアニメブームの流れを無視できなくなったのでしょうか。『火の鳥　鳳凰編』（原作／手塚治虫　山崎晴哉／著）や『悪魔島のプリンス　三つ目がとおる』（原作／手塚治虫　山崎晴哉／著）などの、ノベライズも刊行します。　なんと美少女ＳＦアニメの快作『プロジェクトＡ子』（越沼初美／著）のノベライズまで出たのは、驚きました。

　富野由悠季さんの著作では、小説版『機動戦士ガンダム』など他社で刊行されていた作品も、後に角川文庫に収録されています。
　１９８７年（昭和６２年９月）には、「ＡＮＩＭＥ　ＢＵＮＫＯ」として、『宇宙船サジタリウス』（原作／アンドレア・ロモリ）のフィルムストーリーも出版しました。アニメ誌でもあまり大きく扱ってくれなかった同作品を、フィルム文庫として刊行してくれたのはファンにはありがたいことでした。

　ただこの時期になるとアニメブームもひと段落しており、『サジタリウス』の出版も１９話まで収録した３巻までとなりました。
　出来れば最終回までを出して欲しかったのですが、期待したほどは売れてなかったのでしょう。この「ＡＮＩＭＥ　ＢＵＮＫＯ」シリーズ自体も、続きませんでした。（つづく）


角川文庫「ＡＮＩＭＥ　ＢＵＮＫＯ」『宇宙船サジタリウス』全３巻
「カドカワフィルムストーリー」『ボビーに首ったけ』（原作／片岡義男　
監督／平田敏夫　キャラクターデザイン／吉田秋生）