知られざるピクサー史『ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇』
- 2016/08/07
- 06:49
2009年に発売されたピクサーのノンフィクション、『メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々(THE PIXAR TOUCHI)』(デヴィッド・A・プライス/著 櫻井祐子/訳)。 こちらが昨年2月に『ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇』と改題して、文庫化されていました。
単行本で一度で読んでいましたが、文庫化された機会にまた再度一気に読み通してしまいました。
ピクサーが、元々『スターウォーズ』のジョージ・ルーカスの会社で、それが、アップルのスティーブ・ジョブスにオーナーが変わり、その後ディズニーと提携したという大まかな流れは知っていました。ですが、初期の事業は、ソフトやハードの制作がメインであり、映像制作は従だったとは意外でした。
またディズニーからも、歓迎されていたわけでなく、大ヒットした『トイストーリー』でさえ当初、かなり不利な契約を交わさせられていたことも驚きです。
この本で一番印象的な人物は、ピクサーの社長となったエド・キャットムルです。彼は、若き日に夢見た全編CGのアニメーション映画を作るとため、幾度の困難にも負けずその情熱のために突き進みました。
そして、『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』、『カーズ』など、3Dアニメーションでも魅力的な世界を描き出したジョン・ラセターの存在も忘れることはできません。
幼少期より憧れていたディズニーにアニメーターとして入社後も、目指す映像作りが出来ないことを知り、いったん退社します。そして再度入社した際任されたのが、まだまだ黎明期だった3Dアニメーションでした。この出会いが彼のその後の道を決めることになったのです。
キャットムルたちはルーカスのILMに参加する前、1975年に試作したCGアニメの先駆『チューバのダビー』で、ただ絵を動かすだけではだめなことに気づきます。映画を作るにはプロットや筋、物語性、そしてキャラクターに命を吹き込む優れたアニメーターが必要なのです。その役を担ったのがラセターさんでした。
このことは日本でもまだCGアニメの黎明期に、ゲーム業界とはいえ積極的に参加された金田伊功さんの姿勢にもダブりました。
本書には残念ながら頓挫しましたが、『トイストーリー』制作以前に、意外にも日本の出版社である小学館が『孫悟空』の制作を彼らに打診していたことが書かれています。
また2002年2月、宮崎駿さんが同スタジオを訪問した時のことも、詳しく記されています。その際に、『Mr.インクレディブル』の原案で監督だったブラッド・バードが宮﨑さんの言葉に励まされたというエピソードは、作品制作中の監督にとってどれだけ心強かったかが分かります。
成功とは当初から約束されるものではなく、挫折を繰り返しながらも、強い信念を持ちことに立ち向かった人こそが得られるものなのでしょう。それはアニメだけではなく、あらゆる物事に通じることだと思います。
そのことが改めて分かることでも、興味深い一冊でした。

『メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々(THE PIXAR TOUCHI)』(デヴィッド・A・プライス/著 櫻井祐子/訳)
『ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇』(デヴィッド・A・プライス/著 櫻井祐子/訳)
文庫化で表紙のデザインが変わり、目立つようになってよかったです。
単行本で一度で読んでいましたが、文庫化された機会にまた再度一気に読み通してしまいました。
ピクサーが、元々『スターウォーズ』のジョージ・ルーカスの会社で、それが、アップルのスティーブ・ジョブスにオーナーが変わり、その後ディズニーと提携したという大まかな流れは知っていました。ですが、初期の事業は、ソフトやハードの制作がメインであり、映像制作は従だったとは意外でした。
またディズニーからも、歓迎されていたわけでなく、大ヒットした『トイストーリー』でさえ当初、かなり不利な契約を交わさせられていたことも驚きです。
この本で一番印象的な人物は、ピクサーの社長となったエド・キャットムルです。彼は、若き日に夢見た全編CGのアニメーション映画を作るとため、幾度の困難にも負けずその情熱のために突き進みました。
そして、『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』、『カーズ』など、3Dアニメーションでも魅力的な世界を描き出したジョン・ラセターの存在も忘れることはできません。
幼少期より憧れていたディズニーにアニメーターとして入社後も、目指す映像作りが出来ないことを知り、いったん退社します。そして再度入社した際任されたのが、まだまだ黎明期だった3Dアニメーションでした。この出会いが彼のその後の道を決めることになったのです。
キャットムルたちはルーカスのILMに参加する前、1975年に試作したCGアニメの先駆『チューバのダビー』で、ただ絵を動かすだけではだめなことに気づきます。映画を作るにはプロットや筋、物語性、そしてキャラクターに命を吹き込む優れたアニメーターが必要なのです。その役を担ったのがラセターさんでした。
このことは日本でもまだCGアニメの黎明期に、ゲーム業界とはいえ積極的に参加された金田伊功さんの姿勢にもダブりました。
本書には残念ながら頓挫しましたが、『トイストーリー』制作以前に、意外にも日本の出版社である小学館が『孫悟空』の制作を彼らに打診していたことが書かれています。
また2002年2月、宮崎駿さんが同スタジオを訪問した時のことも、詳しく記されています。その際に、『Mr.インクレディブル』の原案で監督だったブラッド・バードが宮﨑さんの言葉に励まされたというエピソードは、作品制作中の監督にとってどれだけ心強かったかが分かります。
成功とは当初から約束されるものではなく、挫折を繰り返しながらも、強い信念を持ちことに立ち向かった人こそが得られるものなのでしょう。それはアニメだけではなく、あらゆる物事に通じることだと思います。
そのことが改めて分かることでも、興味深い一冊でした。

『メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々(THE PIXAR TOUCHI)』(デヴィッド・A・プライス/著 櫻井祐子/訳)
『ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇』(デヴィッド・A・プライス/著 櫻井祐子/訳)
文庫化で表紙のデザインが変わり、目立つようになってよかったです。
- 関連記事
-
- 魚乃目三太さんの『しあわせのひなた食堂』
- 祝『夜廻り猫』単行本化
- 知られざるピクサー史『ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇』
- 大塚英志著『二階の住人とその時代 ~転換期のサブカルチャー私史』
- トリスタン・ブルネ著『水曜日のアニメが待ち遠しい』