勝田久著『昭和声優列伝 テレビ創世記を声でささえた名優たち』
- 2017/02/25
- 07:28
声優界の大御所、勝田久さんから、89歳にして出版された著書をご恵贈いただきました。
『昭和声優列伝 テレビ創世記を声でささえた名優たち』(駒草出版刊)と題し、ご自身の半生と声優の歴史をからめた軽妙な文章と、声優仲間たちを紹介した二部構成となっています。
ラジオ放送時代からNHKや民放各局で活躍され、声優という職業にプライドを持ってこられた勝田さんの歩みは、そのまま「声優」の歴史でもあります。
実際に道を切り開いてこられた勝田さんが記されたエピソードは、いずれも体験されたものばかりで臨場感あふれその内容に引き込まれます。
元々、俳優として菊田一夫さんの『鐘の鳴る丘』に出演されたこともある勝田さんは、NHKの募集に合格し、声優としてのキャリアをスタートされました。
その後、他の民放局のラジオドラマでも『少年探偵団』の明智小五郎を演じ人気となり、テレビ時代に入っても洋画の吹き替えやナレーターなどで活躍されました。
また活弁士出身で日本の元祖声優ともいえる徳川無声さんとも、この頃交流があったそうです。
そして、国産初の30分のテレビシリーズ『鉄腕アトム』(原作/手塚治虫)に、お茶ノ水博士役として参加されたのです。その後、『サスケ』(原作/白土三平)の名ナレーションや、『闘将ダイモス』の和泉博士とオルバン大公など、様々なアニメ作品で活躍されました。
アニメブーム時には、声優志願の若者のためにいち早く養成機関である勝田話法研究所(後の勝田声優学院)を立ち上げ、以降数多くの後進を育て上げました。また創刊当初の『アニメージュ』(徳間書店)や『マイ・アニメ』(秋田書店刊)などにも連載を執筆するなど、マルチな才能を発揮されていました。私も、勝田さんの連載を楽しみにしていた一人です。
本書の第二部は、その『マイ・アニメ』に連載されていた「勝田久の声優列伝」を採緑したものです。確かに初出は30年以上前の記事ですが、その内容は決して古びてはいません。それは仕事仲間とはいえ、それぞれの声優さんの人物像に深く切り込み、まとめているからでしょう。
なにより、富山敬さんや、山田康雄さん、広川太一郎さん、大平透さん、久松保夫さんなど、亡くなられた名優たちの生前の貴重な証言とそのバイオグラフィー、そして人生哲学までがサラリとまとめられているのです。各章を読みながら、声優さんそれぞれの声も記憶に甦ってきました。
声優歴68年になられる勝田さんは、この4月には、めでたく90歳を迎えられるそうです。今もこれだけの本をまとめられるエネルギーには、ただただ脱帽するしかありません。
名声優が綴った自らの歩みとその時代、そしてアニメブーム時に活躍していた声優たちの思い出も甦る『昭和声優列伝』。読み応えのある一冊です。

勝田久著『昭和声優列伝 テレビ創世記を声でささえた名優たち』(駒草出版刊)
『昭和声優列伝 テレビ創世記を声でささえた名優たち』(駒草出版刊)と題し、ご自身の半生と声優の歴史をからめた軽妙な文章と、声優仲間たちを紹介した二部構成となっています。
ラジオ放送時代からNHKや民放各局で活躍され、声優という職業にプライドを持ってこられた勝田さんの歩みは、そのまま「声優」の歴史でもあります。
実際に道を切り開いてこられた勝田さんが記されたエピソードは、いずれも体験されたものばかりで臨場感あふれその内容に引き込まれます。
元々、俳優として菊田一夫さんの『鐘の鳴る丘』に出演されたこともある勝田さんは、NHKの募集に合格し、声優としてのキャリアをスタートされました。
その後、他の民放局のラジオドラマでも『少年探偵団』の明智小五郎を演じ人気となり、テレビ時代に入っても洋画の吹き替えやナレーターなどで活躍されました。
また活弁士出身で日本の元祖声優ともいえる徳川無声さんとも、この頃交流があったそうです。
そして、国産初の30分のテレビシリーズ『鉄腕アトム』(原作/手塚治虫)に、お茶ノ水博士役として参加されたのです。その後、『サスケ』(原作/白土三平)の名ナレーションや、『闘将ダイモス』の和泉博士とオルバン大公など、様々なアニメ作品で活躍されました。
アニメブーム時には、声優志願の若者のためにいち早く養成機関である勝田話法研究所(後の勝田声優学院)を立ち上げ、以降数多くの後進を育て上げました。また創刊当初の『アニメージュ』(徳間書店)や『マイ・アニメ』(秋田書店刊)などにも連載を執筆するなど、マルチな才能を発揮されていました。私も、勝田さんの連載を楽しみにしていた一人です。
本書の第二部は、その『マイ・アニメ』に連載されていた「勝田久の声優列伝」を採緑したものです。確かに初出は30年以上前の記事ですが、その内容は決して古びてはいません。それは仕事仲間とはいえ、それぞれの声優さんの人物像に深く切り込み、まとめているからでしょう。
なにより、富山敬さんや、山田康雄さん、広川太一郎さん、大平透さん、久松保夫さんなど、亡くなられた名優たちの生前の貴重な証言とそのバイオグラフィー、そして人生哲学までがサラリとまとめられているのです。各章を読みながら、声優さんそれぞれの声も記憶に甦ってきました。
声優歴68年になられる勝田さんは、この4月には、めでたく90歳を迎えられるそうです。今もこれだけの本をまとめられるエネルギーには、ただただ脱帽するしかありません。
名声優が綴った自らの歩みとその時代、そしてアニメブーム時に活躍していた声優たちの思い出も甦る『昭和声優列伝』。読み応えのある一冊です。

勝田久著『昭和声優列伝 テレビ創世記を声でささえた名優たち』(駒草出版刊)
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