ビデオソフトの時代 ⑦

　テレビアニメの全話が最初にビデオソフト化されたのは、もちろん『宇宙戦艦ヤマト』でした。
　あの当時アニメブームを牽引していた作品ですから、３万円もする豪華本や高価なビデオソフトの購買層も確実に存在したのでしょう。

　１９８４年（昭和５９年）２月に各巻３話ずつ収録され、全９巻の形で発売されました。なんと定価は１本１万４４００円で、全巻を揃えると１２万９６００円になり、一般人にはとても手が届かないものでした。
　手を出せなかった熱心なファンたちは、レンタルビデオで借りてダビングしたりして、この作品を手元に置こうとしました。

　余談ですが、後年のレーザーディスク時代、テレビシリーズ全話ソフト化の大ヒット作は、『うる星やつら』です。こちらは全５０枚のＢＯＸセットが定価３３万円でした。それが、初回限定３０００セットに追加再販３０００セットとなる大ヒット商品となりました。
　やはり、アニメ商品のマーケットを牽引するのも、ヒット作次第だということでしょう。

　その後、１９８５年（昭和６０年）には、劇場公開から時間を空けず『カムイの剣』（原作／矢野徹）、『うる星やつら３　リメンバー・マイ・ラブ』（原作／高橋留美子）、そしてＯＶＡでは『幻夢戦記レダ』、『メガゾーン２３』などが発売され、それぞれ好セールスとなりました。

　若手の人気クリエイターであった、いのまたむつみさんを擁した『幻夢戦記レダ』や、『超時空要塞マクロス』の人気クリエイターが再集結した『メガゾーン２３』は、ＯＶＡとはいえ高いクオリティで劇場版作品にも決して劣らないものでした。

　いやそれ以上に、ファンと近い世代のクリエイターたちが描き出すエネルギッシュな作品世界に、アニメファンは強い共感を覚えました。
　そして、それはセールス的にも成功したのです。以降、アニメファン向けの人気クリエイターによるＯＶＡ作品が多数企画されるようになりました。（つづく）


『カムイの剣』（製作／角川ビデオ　発売／東映）定価14,800円。
村野守美さんによるキャラクターは惚れ惚れする虫プロ劇画調で、
その絵を野田卓雄さんが見事にまとめあげてくれました。


『メガゾーン２３』『メガゾーン２３　ＰＡＲＴⅡ』（製作・著作／あいどる　発売／ビクター音楽産業）
ＰＡＲＴⅡでいきなりガラっと梅津泰臣さんの絵柄に変わったのは驚かされました。