金山明博さんとの不思議なご縁 その５

　２００６年に金山さんからいただいた年賀状に、「地元の画廊を８月に借りる予約をしたので、個展をやりたい。そのために是非協力して欲しい」と書いてありました。
　あまりにも突然な話でしたので驚いて連絡を取ると、「昨年まで体調を崩していたが、このままでは終れない、もう一度元気に絵を描きたい」とおっしゃるのです。
　お住まいの狭山まで向かいましたが、以前と違いゲッソリとやつれたお姿にびっくりしました。そして、久しぶりにゆっくりとお話させていただきました。
　専門学校時代に激務で倒れて緊急入院したこと。その後、病の影響なのか、しゃっくりがそれ以降一日中ずっと止まらず、寝ていても不規則に続いており毎日苦しいこと。
　そんな体調の悪い中でも、パリで行われたアニメイベント「Ｔａｉｆｕ　ｆｅｓｔａ」に招かれ、ヨーロッパ各地から集まったファンたちに大歓迎されたこと。せっかくのパリ訪問だったのに、向こうのファンの気持ちに応えようと、ホテルに籠もって色紙を１００枚以上描きあげたこと。
　今も身体の調子も思わしくないが、とにかく今は気力で絵を描いていること、などを、お聞きしました。
　本当に現在の状況は決してよくないことは分りましたが、金山さんがまだまだ絵を描く意欲を失っていないことは嬉しいことでした。減量後の力石のようにお顔はやつれたご様子でしたが、眼だけは生気に燃えてギラギラしていたのです。
　「私は、いつも逆境になると燃えるんですよ」とおっしゃった言葉に、偽りはありませんでした。まさに、あの頃の金山さんは、自身の創作に全身全霊を賭けて打ち込んでいらっしゃいました。案内されたアトリエにも、何枚も執筆中の絵が所狭しと置いてあったのです。
　そうなるとやれることはただ一つ、いかに個展を成功させるかだけです。会場になる画廊を二人で下見して総展示作品数を割り出し、あと何作品あれば壁が埋まるか。事前の告知をどうするか。個展タイトルをどうするか。それぞれの作品の題をどうつけるのか。解説文も必要だろう。作者プロフィールは、どんな文章にするのか。来てくれた方へのおみやげになる販売物を作るのか、などなど。二人でいつも話し合っていました。
　金山さんは、せっかくファンの人にも来てもらうんだったら、みんなに喜んでもらえるイベントもやりたいとおっしゃり、その記念イベントのトークショーもお手伝いすることになりました。（つづく）


この当時個展のために執筆中だった美人画２点　　パリで出会った女性たちがモチーフ