劇画調アニメのルーツは(その2)
- 2014/04/13
- 09:30
『大空魔竜ガイキング』は、その当時の自分にとってはとても贅沢な作品だったと思います。作画の違いを徐々に意識し始めていましたから、毎回の絵の違いがバラエティーに富んでいて、とても楽しみだったのです。
元々のキャラクター原案の杉野昭夫さんは、エンディングで詩的で素晴らしい絵を描いていらっしゃいましたし、時々作画監督としても参加されました。担当の回数は少なかったのですが、始まると「おお、この絵は」と嬉しくなりました。
キャラクターデザインの白土武さんも独自の濃い目の劇画タッチで、渋く格好良いツワブキサンシローを描いてくれました。『宇宙戦艦ヤマト』でも白土さんが描く古代進は、劇画調が際立っていたのですが、その古代の感じに似てました。
野田卓雄さんが作画されるとフジヤマミドリがとても美人でしたし、スマートなキャラクターたちも素敵でした。青鉢芳信さんが描いた『バラの宇宙船』のメロドラマの回は芹川有吾さんの演出もあり、キャラクターの芝居が感動的で当時とても胸を打ちました。
余談ですが、野田卓雄さんの回はキャラクターは格好良いのですが、時々ポーズや構図が独特で一風変わったシーンが出てました。同時間帯に放送された前作『ゲッターロボ』や『ゲッターロボG』もそうでしたが、動きもなんだかとても変わっているのですが、とにかく独特で何故だかスカッとするアクションなのです。
当時出ていた玩具で、手軽にフィルムを再生できる「くるくるテレビ」というものがありました。それで『ガイキング』を買ったら、まさにそんな回の34話「猛烈火車カッター」で、家にビデオが無い時代何度も繰り返し見直していたことを覚えています。その作画をされたのが、金田伊功さんでした。
ほかにも、『エイトマン』、『遊星仮面』など、原作者である桑田二郎さんや、楠高治さんたちの端正な劇画調の絵を忠実に動かしていたTCJ(現エイケン)のモノクロ時代の作品も、とても格好良くて好きでした。
そのうち、アニメ雑誌『ランデヴー』や『アニメージュ』などが続々創刊されました。それまで知りたかったいろんな情報が入ってきて、子どもの頃から魅了された作品を手掛けたアニメーターが分ってきました。
その方々のインタビューや特集記事を読むうちに、それまで自分の好きになったアニメーターや演出家、スタッフの方々のことを調べるようになりました。どうやってあの絵柄が生まれたのか、そのルーツが知りたくなったのです。
タツノコプロの吉田竜夫さん、『黄金バット』の加太こうじさん、そして『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるさんは、紙芝居のご出身だったと知りました。
金山明博さん、荒木伸吾さん、出崎統さんたちは劇画出身だと知り、昔お描きになった貸本劇画を読みたくて、古書店を探し廻りました。
当時は地方に住んでましたから、まんが古書専門店など無く、貸本屋から流れたボロボロになった本を、場末の古書店の店先などで見つけらればラッキーでした。大学で上京してからは、もちろん中野のまんだらけや、神保町の中野書店に通って探していました。
おもしろいことに、この当時は「劇画調」というと、さいとう・たかをさんや、川崎のぼるさん、池上遼一さんたちのようなリアルに描かれた絵を指していました。
ただ実際に貸本劇画を読み始めると、描かれた世界はリアルかもしれませんが、絵柄は決してそんなにリアルなタッチばかりではありません。
中でも荒木伸吾さんの作品は、絵柄も描かれる世界もとても叙情的で、アニメーター時代まではっきりと繋がっていることが分りました。その時でも発表から10年以上経っていたのに、作品は決して古びておらず魅力的でした。
後に、少年時代に頑張って探し出しては読んで感動していたことを荒木さんにお話ししましたら、「そう言ってもらえたら、今でもとてもうれしいですよ。あの頃はあんまり反響もなくて、ただガムシャラに描いていただけでしたから」なんて、ニッコリと微笑んでいただきました。(つづく)

『大空魔竜ガイキング』サンシローの動画 各作画監督の描き方の違いが分かりますね
元々のキャラクター原案の杉野昭夫さんは、エンディングで詩的で素晴らしい絵を描いていらっしゃいましたし、時々作画監督としても参加されました。担当の回数は少なかったのですが、始まると「おお、この絵は」と嬉しくなりました。
キャラクターデザインの白土武さんも独自の濃い目の劇画タッチで、渋く格好良いツワブキサンシローを描いてくれました。『宇宙戦艦ヤマト』でも白土さんが描く古代進は、劇画調が際立っていたのですが、その古代の感じに似てました。
野田卓雄さんが作画されるとフジヤマミドリがとても美人でしたし、スマートなキャラクターたちも素敵でした。青鉢芳信さんが描いた『バラの宇宙船』のメロドラマの回は芹川有吾さんの演出もあり、キャラクターの芝居が感動的で当時とても胸を打ちました。
余談ですが、野田卓雄さんの回はキャラクターは格好良いのですが、時々ポーズや構図が独特で一風変わったシーンが出てました。同時間帯に放送された前作『ゲッターロボ』や『ゲッターロボG』もそうでしたが、動きもなんだかとても変わっているのですが、とにかく独特で何故だかスカッとするアクションなのです。
当時出ていた玩具で、手軽にフィルムを再生できる「くるくるテレビ」というものがありました。それで『ガイキング』を買ったら、まさにそんな回の34話「猛烈火車カッター」で、家にビデオが無い時代何度も繰り返し見直していたことを覚えています。その作画をされたのが、金田伊功さんでした。
ほかにも、『エイトマン』、『遊星仮面』など、原作者である桑田二郎さんや、楠高治さんたちの端正な劇画調の絵を忠実に動かしていたTCJ(現エイケン)のモノクロ時代の作品も、とても格好良くて好きでした。
そのうち、アニメ雑誌『ランデヴー』や『アニメージュ』などが続々創刊されました。それまで知りたかったいろんな情報が入ってきて、子どもの頃から魅了された作品を手掛けたアニメーターが分ってきました。
その方々のインタビューや特集記事を読むうちに、それまで自分の好きになったアニメーターや演出家、スタッフの方々のことを調べるようになりました。どうやってあの絵柄が生まれたのか、そのルーツが知りたくなったのです。
タツノコプロの吉田竜夫さん、『黄金バット』の加太こうじさん、そして『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるさんは、紙芝居のご出身だったと知りました。
金山明博さん、荒木伸吾さん、出崎統さんたちは劇画出身だと知り、昔お描きになった貸本劇画を読みたくて、古書店を探し廻りました。
当時は地方に住んでましたから、まんが古書専門店など無く、貸本屋から流れたボロボロになった本を、場末の古書店の店先などで見つけらればラッキーでした。大学で上京してからは、もちろん中野のまんだらけや、神保町の中野書店に通って探していました。
おもしろいことに、この当時は「劇画調」というと、さいとう・たかをさんや、川崎のぼるさん、池上遼一さんたちのようなリアルに描かれた絵を指していました。
ただ実際に貸本劇画を読み始めると、描かれた世界はリアルかもしれませんが、絵柄は決してそんなにリアルなタッチばかりではありません。
中でも荒木伸吾さんの作品は、絵柄も描かれる世界もとても叙情的で、アニメーター時代まではっきりと繋がっていることが分りました。その時でも発表から10年以上経っていたのに、作品は決して古びておらず魅力的でした。
後に、少年時代に頑張って探し出しては読んで感動していたことを荒木さんにお話ししましたら、「そう言ってもらえたら、今でもとてもうれしいですよ。あの頃はあんまり反響もなくて、ただガムシャラに描いていただけでしたから」なんて、ニッコリと微笑んでいただきました。(つづく)

『大空魔竜ガイキング』サンシローの動画 各作画監督の描き方の違いが分かりますね
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