『フイチン再見!』10巻 発売
- 2017/07/02
- 09:17
今年の『ビッグコミックオリジナル 4/5号』で完結した、『フイチン再見!』の単行本、最終巻である10巻が発売されました。
『龍 -RON-』や、『JIN-仁-』などでおなじみの村上もとかさんが、上田としこさんの生涯を追って描いてきた『フイチン再見!』。連載は、時代が戦後に入ると手塚治虫さんや、赤塚不二夫さん、ちばてつやさん、長谷川町子さんなど、おなじみのマンガ家さんたちも多く登場され、マンガファンとしても興味深く詠ませていただいていました。
今回は、巻末に村上もとかさんによるあとがき「上田としこ先生のこと」も収録され、これで上田としこさんの物語が最終回を迎えたことを、改めて実感しました。
あとがきで、村上さんは『龍 -RON-』の取材で上田さんにお会いしたときのことを、明かしてくれています。満州を舞台にした同作品は、あの当時の満州の街並みの異国情緒を再現されていました。それは、このように丹念に当時を知る方々に取材されたご努力の成果だったということが、改めて分かりました。
取材は、『龍 -RON-』のためだったそうですが、そのお人柄に触れ、上田さんを改めて描いてみたいと思われたそうです。
ただ戦前戦後の動乱期に先進的な女性として先頭を走り続けたという教科書的な姿だけでなく、村上さんは一人の女性としての内面の葛藤や悩み、人間らしい姿も描ききってくれました。
登場する手塚さんや、赤塚さん、ちばさんの上田さんにしかみせなかった姿も印象的で、彼らの人気作を読んでいた時代には、読者も思いもよらなかった創作者としての葛藤が分かりました。特に上海のビルの屋上での赤塚さんとの会話は、胸に突き刺さるものがありました。
確かにきっとそうだろうとは、内心思っていました。ですが、こうして村上さんの圧倒的な絵でこの姿を描いてもらえて、赤塚さんも感謝されているのではないかとも思いました。
手塚さんの苦悩も、上田さんとの会話だからこそより胸に迫りました。そして、それらを受け止めることができたのも、上田としこさんの包容力、人間的な大きさがあったからでしょう。
師匠の松本かつぢ先生。お弟子さんの後輩となる田村セツコさん、上田さんが可愛がった、望月あきらさんたち後進のマンガ家さんたち。村上さんは、望月さんのアシスタント出身でもあるということで、ご自身の先輩マンガ家さんたちに連なる歴史を遡って描いたことになるのですから、マンガ史の一環としても貴重なお仕事です。
実は、最終回の掲載された『ビッグコミックオリジナル 4/5号』から、10巻の発売を待っていましたが、その一方で、あまり早く刊行して欲しくない、という思いもありました。
本棚に10巻を並べることによって、この物語を完結させたくなかったのです。
上田としこさんの物語は完結しましたが、今後は改めて『フイチン再見!』で、村上さんが描かれた素敵な上田さんたちに再見したいと思います。

『フイチン再見!』(小学館刊)10巻
オビ文も素敵でした。まさに「メイファーズ(没法子)」は、「これでいいのだ」に通じる言葉ですね。
■『フイチン再見!』関連記事
村上もとかさんの『フイチン再見!』完結
2017年4月1日
http://animenikansya.blog.fc2.com/blog-entry-377.html
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今回は、巻末に村上もとかさんによるあとがき「上田としこ先生のこと」も収録され、これで上田としこさんの物語が最終回を迎えたことを、改めて実感しました。
あとがきで、村上さんは『龍 -RON-』の取材で上田さんにお会いしたときのことを、明かしてくれています。満州を舞台にした同作品は、あの当時の満州の街並みの異国情緒を再現されていました。それは、このように丹念に当時を知る方々に取材されたご努力の成果だったということが、改めて分かりました。
取材は、『龍 -RON-』のためだったそうですが、そのお人柄に触れ、上田さんを改めて描いてみたいと思われたそうです。
ただ戦前戦後の動乱期に先進的な女性として先頭を走り続けたという教科書的な姿だけでなく、村上さんは一人の女性としての内面の葛藤や悩み、人間らしい姿も描ききってくれました。
登場する手塚さんや、赤塚さん、ちばさんの上田さんにしかみせなかった姿も印象的で、彼らの人気作を読んでいた時代には、読者も思いもよらなかった創作者としての葛藤が分かりました。特に上海のビルの屋上での赤塚さんとの会話は、胸に突き刺さるものがありました。
確かにきっとそうだろうとは、内心思っていました。ですが、こうして村上さんの圧倒的な絵でこの姿を描いてもらえて、赤塚さんも感謝されているのではないかとも思いました。
手塚さんの苦悩も、上田さんとの会話だからこそより胸に迫りました。そして、それらを受け止めることができたのも、上田としこさんの包容力、人間的な大きさがあったからでしょう。
師匠の松本かつぢ先生。お弟子さんの後輩となる田村セツコさん、上田さんが可愛がった、望月あきらさんたち後進のマンガ家さんたち。村上さんは、望月さんのアシスタント出身でもあるということで、ご自身の先輩マンガ家さんたちに連なる歴史を遡って描いたことになるのですから、マンガ史の一環としても貴重なお仕事です。
実は、最終回の掲載された『ビッグコミックオリジナル 4/5号』から、10巻の発売を待っていましたが、その一方で、あまり早く刊行して欲しくない、という思いもありました。
本棚に10巻を並べることによって、この物語を完結させたくなかったのです。
上田としこさんの物語は完結しましたが、今後は改めて『フイチン再見!』で、村上さんが描かれた素敵な上田さんたちに再見したいと思います。

『フイチン再見!』(小学館刊)10巻
オビ文も素敵でした。まさに「メイファーズ(没法子)」は、「これでいいのだ」に通じる言葉ですね。
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村上もとかさんの『フイチン再見!』完結
2017年4月1日
http://animenikansya.blog.fc2.com/blog-entry-377.html