ある水木プロ出身の劇画家一代記
- 2017/09/02
- 11:32
劇画家の土屋慎吾さんが個人で出版されている、自伝的劇画の続編『続・ゲゲゲのアシスタント 官能劇画家への出発編』が出ました。
『ゲゲゲのアシスタント』は、タイトル通り水木しげるさんのアシスタントだった土屋さんの水木プロダクション在籍時のドタバタや、当時の水木さんの姿を描いている私小説的作品です。
元々は、水木さんと奥様の半生をモデルにしたNHK朝ドラ『ゲゲゲの女房』が話題になった頃、Web上に発表していたそうです、そして、まとまったものを書籍化したものです。
土屋さんは、官能劇画の世界で売れっ子になっただけあり、ご自身のアシスタント時代を一切飾ることなく、マンガにしておられます。そのため表現も幾分赤裸々過ぎるところもあり、もしかしたら読者を選ぶ作品なのかもしれません。
ただ水木作品のファンとしては、水木プロ時代のつげ義春さんや水木プロの内情、超多忙時代の水木さんの創作に対する姿勢など、身近に居た人だからこそ語れる内容を興味深く読みました。
人間は、どこかで格好を付けたいものです。ましてや表現者である以上、それはもっと強いはずです。それなのに当時のご自身の思いや行動を下半身事情まで躊躇すること無く描いているのです。ここまで飾ることなく、描きだすことはなかなか出来ません。
土屋さんが官能劇画の世界でトップを取れた理由は、こんなところにもあるのかもと思いました。
『完全版 ゲゲゲのアシスタント ~土屋慎吾の青春記~』は、土屋さんが水木プロを退社するところで終ります。その後の土屋さんの道行きが知りたかったのですが、それが『続・ゲゲゲのアシスタント 官能劇画家への出発編』に描かれています。
土屋さんも結婚したばかりなのに、プロとして一本立ちするため持込などを重ね苦労されます。そして、その絵が認められ「エロ劇画の帝王」と言われるまで上り詰めるのです。
そんな頃、師匠の水木さんは低迷時代に入っていました。人気官能劇画家として、月産200ページを描き出していた土屋さんは、そんな水木さんを内心あざ笑ってしまいます。ただそんな彼にも、その後何年かの後にむくいが訪れるとして、続編は終わります。
今回、土屋さんの人気官能劇画家への歩みのほかには、回想シーンで水木さんが1969年(昭和44年)『マンガ安保』に発表された「地球の墓石」の誕生秘話など、水木ファンには興味深いエピソードも描かれています。
この後、一体なにが土屋さんの身に起こるのか、そして水木さんはどのように復活していくのか、またまた続きがとても気になるラストでした。

土屋慎吾著『続・ゲゲゲのアシスタント 官能劇画家への出発編』2017年7月刊
限定400部とのことです。私はまんだらけで購入しました。
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