『完全解析!出崎統 アニメ「あしたのジョー」をつくった男』
- 2018/03/31
- 10:12
新刊『完全解析!出崎統 アニメ「あしたのジョー」をつくった男』(宝島社)を、お送りいただきました。これは2011年4月に亡くなられた出崎統さんを、まるごと一冊特集した本です。
出崎統さんといえば、『あしたのジョー』、『あしたのジョー2』(原作/高森朝雄 絵/ちばてつや)。『エースをねらえ!』(原作/山本鈴美香)、『ガンバの冒険』(原作/斉藤淳夫)、『宝島』(原作/スティーヴンソン)、『スペースコブラ』(原作/寺沢武一)、『おにいさまへ……』(原作/池田理代子)など、数々の印象に残る作品を創り上げた名演出家です。
登場人物の画面からほとばしる感情表現や、シーンの緊迫感を見事に切り取るハーモニー表現の名手として知られていますが、それ以外にも多彩な映像表現で、見るものを常にそのドラマに引き込んでくれました。
そんな独自の美学で生み出された映像表現の数々を、該当するカットと共に紹介してくれる巻頭のカラーページから嬉しくなります。
目玉記事では、出崎統さん未公開インタビューが注目でしょう。また原作者であるちばてつやさん、実兄の出崎哲さん、『コブラ』原作者の寺沢武一さん、撮影監督の高橋宏固さんも、答えておられます。
第一作の作画監督だった金山明博さんも取材を受けられていたので、こちらの記事も必読です。出崎さんとの虫プロ時代からサンライズの時代。そして現在の創作活動まで語っておられます。本書では、2014年に練馬区美術館で行われた『あしたのジョー、の時代展』のために改めて描かれた力石徹の遺影画も掲載されています。
おなじく作画監督で、名パートナーだった杉野昭夫さんや、美術監督の小林七郎さんも寄稿されていました。それぞれの角度から語られることにより、出崎統さんとその作品が見えてくるいずれも読み応えのある内容でした。
さて今回の本で、ちょっと気になったことがありました。何故、テレビアニメ『あしたのジョー』を立ち上げ、出崎統さんを最初に抜擢した人物について触れられなかったのでしょうか。
虫プロは独立企業ではありましたが、当時資金を握っていたテレビ局や映画会社の意向を無視してアニメを作ることは、合作や下請け制作以外では出来ませんでした。
ましてその頃の人気マンガをアニメ化するのです。原作者側との折衝や、局への粘り強い交渉を続けることは、プロデューサー以外では出来なかったでしょう。
実は先に制作されたパイロット版は、本編スタッフの手によるものではありません。となると社内でも、最初から想定されたわけでなく、本編制作時に彼らを改めて抜擢した人物がいるはずです。
出崎統さん始め優れた若手スタッフを編成し、テレビ局とタフな交渉を続け説得し、このアニメを立ち上げたのは当時虫プロのプロデューサーだった富岡厚司さんです。
せっかく『完全解析!出崎統 アニメ「あしたのジョー」をつくった男』というタイトルで、ここまで出崎さんを探求されたのです。最初に出崎さんら優秀なメインスタッフを抜擢した富岡さんのことも触れてもらえていれば、より深まったのではとも思いました。

宝島社『完全解析!出崎統 アニメ「あしたのジョー」をつくった男』(別冊宝島編集部/編)
出崎統さんといえば、『あしたのジョー』、『あしたのジョー2』(原作/高森朝雄 絵/ちばてつや)。『エースをねらえ!』(原作/山本鈴美香)、『ガンバの冒険』(原作/斉藤淳夫)、『宝島』(原作/スティーヴンソン)、『スペースコブラ』(原作/寺沢武一)、『おにいさまへ……』(原作/池田理代子)など、数々の印象に残る作品を創り上げた名演出家です。
登場人物の画面からほとばしる感情表現や、シーンの緊迫感を見事に切り取るハーモニー表現の名手として知られていますが、それ以外にも多彩な映像表現で、見るものを常にそのドラマに引き込んでくれました。
そんな独自の美学で生み出された映像表現の数々を、該当するカットと共に紹介してくれる巻頭のカラーページから嬉しくなります。
目玉記事では、出崎統さん未公開インタビューが注目でしょう。また原作者であるちばてつやさん、実兄の出崎哲さん、『コブラ』原作者の寺沢武一さん、撮影監督の高橋宏固さんも、答えておられます。
第一作の作画監督だった金山明博さんも取材を受けられていたので、こちらの記事も必読です。出崎さんとの虫プロ時代からサンライズの時代。そして現在の創作活動まで語っておられます。本書では、2014年に練馬区美術館で行われた『あしたのジョー、の時代展』のために改めて描かれた力石徹の遺影画も掲載されています。
おなじく作画監督で、名パートナーだった杉野昭夫さんや、美術監督の小林七郎さんも寄稿されていました。それぞれの角度から語られることにより、出崎統さんとその作品が見えてくるいずれも読み応えのある内容でした。
さて今回の本で、ちょっと気になったことがありました。何故、テレビアニメ『あしたのジョー』を立ち上げ、出崎統さんを最初に抜擢した人物について触れられなかったのでしょうか。
虫プロは独立企業ではありましたが、当時資金を握っていたテレビ局や映画会社の意向を無視してアニメを作ることは、合作や下請け制作以外では出来ませんでした。
ましてその頃の人気マンガをアニメ化するのです。原作者側との折衝や、局への粘り強い交渉を続けることは、プロデューサー以外では出来なかったでしょう。
実は先に制作されたパイロット版は、本編スタッフの手によるものではありません。となると社内でも、最初から想定されたわけでなく、本編制作時に彼らを改めて抜擢した人物がいるはずです。
出崎統さん始め優れた若手スタッフを編成し、テレビ局とタフな交渉を続け説得し、このアニメを立ち上げたのは当時虫プロのプロデューサーだった富岡厚司さんです。
せっかく『完全解析!出崎統 アニメ「あしたのジョー」をつくった男』というタイトルで、ここまで出崎さんを探求されたのです。最初に出崎さんら優秀なメインスタッフを抜擢した富岡さんのことも触れてもらえていれば、より深まったのではとも思いました。

宝島社『完全解析!出崎統 アニメ「あしたのジョー」をつくった男』(別冊宝島編集部/編)
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