手塚治虫さんの最初の読者たちのドラマ
- 2018/07/14
- 10:23
小学館文庫の新刊『手塚番 神様の伴走者』(佐藤敏章/インタビュー)を読みました。これは、手塚治虫さんの担当編集者だった方々へのインタビュー集です。
小学館、講談社、秋田書店、少年画報社、朝日ソノラマ、潮出版、文芸春秋、虫プロ商事など、手塚さんが生前連載を持っていた雑誌の編集者たちが勢ぞろいして、担当時代を振り返っておられます。
それぞれの版元の名前を聞くだけで、今でも掲載誌と作品が思い浮かぶくらい、手塚さんのお仕事は印象に残っています。
編集者としては13名、外伝として実業之日本社の編集出身で手塚プロ社長である松谷孝征さん、最初期にアシスタントを務めた藤子不二雄Aさん。そして文庫化にあたって、『ビッグコミック』を小学館で立ち上げられた名物編集長、小西湧之助さんのインタビューも収録されてます。
「ビッグコミック1」での連載時より楽しみに読んでおり、2010年刊行の単行本も読んでいましたが、今回文庫で読み直して改めて感じたことがあります。
皆さんの担当されていた作品は、ほとんどの方が虫プロ社長時代に重なっているのです。ただでさえ殺人的なスケジュールの中、それぞれ自社の原稿を先に上げてもらうため殺気立っていたはずです。ですが当時は、アニメ制作にも情熱を燃やしておられた手塚さんなのです。
気がつくとアニメの方に行ってしまう手塚さんを見て、どれだけ恨めしかったかとも感じました。
手塚さんご自身は決して悪気はなかったのでしょうが、原稿を描いてもらうため奮闘された編集者の皆さんのご苦労が改めて分かりました。
残念ながら、本書には集英社の編集者はいません。それは、集英社一番の手塚番だった長野規さんが、すでに亡くなっているからでしょう。
新時代の週刊誌『少年ジャンプ』を創刊し快進撃を続けさせた名編集者でしたが、同誌に手塚賞を設立し、手塚さんとのお付き合いを生涯大事にされた方でもありました。
私も何度かご自宅にお邪魔して、お話をお聞かせいただきました。懐かしそうに『おもしろブック』時代の別冊付録『ライオンブックス』を取り出し、手塚さん担当時代のことをお聞かせいただいたことは忘れられません。
この本にご登場された方々にも共通しますが、原稿をもらうことに苦労されたでしょうが、一言も悪しざまにおっしゃることはありませんでした。
まず、描きあがった原稿を読む、最初の読者である編集者。彼らの反応が手塚さんにとって貴重な道しるべとなっていたことは間違いありません。
編集者は黒子ですが、ある意味では一緒に作品を送り出してくれた、貴重な存在です。
数々の名作を送り出してくれた手塚治虫さんとともに、陰で作品を支えてきた編集者の方々にも改めて感謝です。

小学館文庫『手塚番 神様の伴走者』(佐藤敏章/インタビュー)
小学館、講談社、秋田書店、少年画報社、朝日ソノラマ、潮出版、文芸春秋、虫プロ商事など、手塚さんが生前連載を持っていた雑誌の編集者たちが勢ぞろいして、担当時代を振り返っておられます。
それぞれの版元の名前を聞くだけで、今でも掲載誌と作品が思い浮かぶくらい、手塚さんのお仕事は印象に残っています。
編集者としては13名、外伝として実業之日本社の編集出身で手塚プロ社長である松谷孝征さん、最初期にアシスタントを務めた藤子不二雄Aさん。そして文庫化にあたって、『ビッグコミック』を小学館で立ち上げられた名物編集長、小西湧之助さんのインタビューも収録されてます。
「ビッグコミック1」での連載時より楽しみに読んでおり、2010年刊行の単行本も読んでいましたが、今回文庫で読み直して改めて感じたことがあります。
皆さんの担当されていた作品は、ほとんどの方が虫プロ社長時代に重なっているのです。ただでさえ殺人的なスケジュールの中、それぞれ自社の原稿を先に上げてもらうため殺気立っていたはずです。ですが当時は、アニメ制作にも情熱を燃やしておられた手塚さんなのです。
気がつくとアニメの方に行ってしまう手塚さんを見て、どれだけ恨めしかったかとも感じました。
手塚さんご自身は決して悪気はなかったのでしょうが、原稿を描いてもらうため奮闘された編集者の皆さんのご苦労が改めて分かりました。
残念ながら、本書には集英社の編集者はいません。それは、集英社一番の手塚番だった長野規さんが、すでに亡くなっているからでしょう。
新時代の週刊誌『少年ジャンプ』を創刊し快進撃を続けさせた名編集者でしたが、同誌に手塚賞を設立し、手塚さんとのお付き合いを生涯大事にされた方でもありました。
私も何度かご自宅にお邪魔して、お話をお聞かせいただきました。懐かしそうに『おもしろブック』時代の別冊付録『ライオンブックス』を取り出し、手塚さん担当時代のことをお聞かせいただいたことは忘れられません。
この本にご登場された方々にも共通しますが、原稿をもらうことに苦労されたでしょうが、一言も悪しざまにおっしゃることはありませんでした。
まず、描きあがった原稿を読む、最初の読者である編集者。彼らの反応が手塚さんにとって貴重な道しるべとなっていたことは間違いありません。
編集者は黒子ですが、ある意味では一緒に作品を送り出してくれた、貴重な存在です。
数々の名作を送り出してくれた手塚治虫さんとともに、陰で作品を支えてきた編集者の方々にも改めて感謝です。

小学館文庫『手塚番 神様の伴走者』(佐藤敏章/インタビュー)
- 関連記事
-
- サンエイムック『「ゲゲゲの鬼太郎」大解剖』
- 『「あしたのジョー」DVD BOOK vol.4』発売
- 手塚治虫さんの最初の読者たちのドラマ
- 日本初の青年漫画誌誕生秘話『ルーザーズ』
- 新刊『日本懐かしカード大全』に注目!