『「
あしたのジョー2」COMPLETE DVD BOOK』(ぴあ刊)が、3月末に発売されたVOL.5で完結しました。
昨年3月から始まった、虫プロ版の第一作『「あしたのジョー」COMPLETE DVD BOOK』』全8巻と合わせると、全13巻の刊行となりました。
VOL.5は、ハリマオとの戦いを制した第39話「ジャングルに…野獣が二匹」から始まります。物語のラストを迎える、武道館でのホセ・メンドーサとの死闘を描いた第44話「葉子…その愛」から、第47話「青春はいま…燃え尽きた」まで、全9エピソードを収録しています。
第一シリーズを制作したのは、手塚治虫さんの虫プロでした。この時、手塚さんが自らちばてつやさんの自宅を訪れアニメ化を要請したという話も、もはや伝説的エピソードでしょう。
この虫プロ版第一作と東京ムービーによる『
あしたのジョー2』の監督を務めたのが、出崎統さんです。出崎さんといえば、『宝島』や『ガンバの冒険』、『エースをねらえ!』、『家なき子』、『スペースコブラ』など、キャラクターのほとばしる感情を描き出す名手です。
『
あしたのジョー2』では、作画には名パートナーである杉野昭夫さん、そして美術の名手・小林七郎さん、音楽には荒木一郎さんを迎え、あの1980年代に、矢吹ジョーを呼び戻してくれました。
今回の解説書には、氷川竜介さんと中村宏治さんが、あの『ジョー2』のラスト以降に込められた出崎さんの想いを、考察してくれています。
リアルタイムで見ていた頃、第2期のオープニングで描かれるジョーは、最終回以降の姿じゃないかとも漠然と感じていましたので、改めて合点がいくものでした。
「ミッドナイト・ブルース」は荒木一郎さんの曲が夕陽の中をさすらうジョーの姿にマッチしており、あの間奏を吹きたくて私もハーモニカを始めたくらいです。
当時、東京ムービー作品は色彩のセンスが良く、『
あしたのジョー2』は特に杉野さんの作画も相まって、独特の渋い画面になっていました。キャラクターの2段影3段影やハイライト、そして撮影で駆使した透過光も入り、アニメなのに奥行きの深いカットがリアルで印象的でした。
普段の夜の闇、そしてスポットライトに照らされた明るいリング、ハワイでのギラギラした陽射しなど、作画、美術、セルの色指定、撮影など、すべてが『
あしたのジョー2』の世界に調和していました。ある意味で、当時のリアル調アニメの最高峰に達していたのではないでしょうか。
今回の解説書には杉野昭夫さんが描き下ろされたジョーが掲載されています。ちょっと雰囲気が変わっていますが、あれだけ感情を込めていたジョーを今描くことは、杉野さんでも難しいことだと分かりました。
資料的にも充実した全13巻の監修を一年に渡って務め上げられた、『あしたのジョー』ファンサイトの運営で知られるアニメーターの野口征恒さんにも感謝です。
『「あしたのジョー2」COMPLETE DVD BOOK』VOL.5
なんと、5月からは『宝島』のDVD BOOKが全3巻で始まると予告が出ていました。
あの出崎さんのシルバーとジムにまた会えるのが、また楽しみです。
『あしたのジョー2』ホセ・メンドーサ戦 原動画
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