NHK朝ドラ初のアニメーターが主役となる『なつぞら』では、いよいよなつの東京での舞台となるアニメスタジオ・東洋動画が出てきました。
これからは、モデルである奥山玲子さんが在籍された東映動画時代をモチーフに描かれていくのでしょう。劇中では『白蛇伝』ならぬ『白蛇姫』を制作する現場や、もりやすじさんや、大塚康生さんらしき人たちも出てきて、うれしくなります。
当時のことは、これまで本やOBの方々のお話などで見聞きしていましたが、ドラマで再現されることでよりリアルに感じることができそうです。
最近マンガでも、そんなアニメ初期の頃の実録作品が刊行されました。テレビアニメ黎明期の手塚治虫さんと
虫プロを描いた週刊少年チャンピオンコミックスEXTRAの『TVアニメ創作秘話 手塚治虫とアニメを作った若者たち』(原作/宮崎克 漫画/野上武志)です。これは『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)に短期連載されたものです。
原作者である宮崎克さんは、吉本浩二さんと組んだ前作『ブラックジャック創作秘話』に続き、この新作では野上さんとアニメ時代の手塚さんの姿をマンガで再現しておられます。
今回は、杉井ギザブローさん、石津嵐さん、小林準治さん、下崎闊さんに、それぞれ手塚さんとの関わりを取材しています。また、アニメ・特撮研究家の氷川竜介さんにも会われ、アニメ史的な流れも把握されています。
興味深かったのは、杉井ギサブローさんのエピソードです。『鉄腕アトム』初期のことは、これまでも多くの方々が語ってこられました。ただ杉井さんが体験者として語られる『アトム』放送前夜の話は、野上さんの絵を通じてより緊迫した当時の空気感を感じることができました。
また小林準治さんの、後年の『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』での、ミニチュアを作成して作画の参考にした話や、それが『ジャンピング』に発展したというエピソードなどは、興味深いものです。
石津嵐さんのエピソードは、『
虫プロのサムライたち』や『秘密の手塚治虫』でも何度も読んでいましたので、改めて石津さんのから見た手塚さんの姿をマンガで知ることができました。
勝手を申せば、作中でここまで印象的に描かれている、
虫プロ一の美人と言われた中村和子さん(ワコさん)にも取材していただきたかったところです。私も以前お話をうかがったことがありますが、チャーミングで素敵な方でした。
そのほか、
虫プロ動画部長だった沼本清海さんや、『W3』では、プロデューサーの黒川慶二郎さん、そしてチーフディレクターだった杉山卓さんのインタビューなども、『まんだらけZENBU』には掲載されています。
もし続編があるのでしたら、これらの証言も基にして手塚さんと当時のスタッフたちの奮闘ぶりをさらに深く描いていただけたらとも思いました。
少年チャンピオンコミックスEXTRA『TVアニメ創作秘話 手塚治虫とアニメを作った若者たち』
(原作/宮崎克 漫画/野上武志)
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