辻真先さんの新作書き下ろし小説『焼跡の二十面相』
- 2019/07/13
- 09:35
数多くの推理小説を発表されてきた、辻真先さんの新刊が出ました。今回は、江戸川乱歩の『怪人二十面相』を辻さん流に料理した痛快冒険探偵小説です。
辻真先さんといえば、古くからのアニメファンにとっては、『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』から、『8マン』、『デビルマン』、『マジンガーZ』、『超電磁ロボ コン-バトラーV』など、数々のテレビアニメのヒット作を手掛けてこられた伝説的な脚本家です。
1932年(昭和7年)生まれでいらっしゃいますから、今年で87歳になられることになります。
その辻さんが、若々しい10代の小林少年を主人公に、躍動感溢れる作品を執筆されたのですから、その健筆ぶりはアニメファンとしても嬉しくなります。
舞台は、終戦直後の東京。応召中の明智小五郎の留守を守る少年探偵の小林芳夫君のもとに、怪人二十面相出現の報が届きます。
小林少年は、明智小五郎の不在の中、中村警部と共に事件を追うことになります。
没落貴族や、焦土と化した東京でそれぞれ必死になって生きる人々。食べるものすら無い時代なのに、隠し財産を持ったブローカーたちは暗躍し、新たな権力である米軍におもねっています。
食べ物もなく苦しい時代ですが、中学生の小林少年はやがて帰ってくるだろう明智探偵のため、事件解決に奮闘します。
作品中に出てくる、占領軍といわず進駐軍、敗戦といわず終戦など、舞台である戦後すぐの混乱期を冷静に喝破していく小林少年の姿は、この当時同世代だった辻さんの思いでもあるのでしょう。
江戸川乱歩が、光文社の『少年』に連載し、ポプラ社で単行本化されていた少年小説の文体で書かれていますが、辻さんのこの時代を体験した人だからこそ伝えたいであろうメッセージもしっかりと記述されています。
辻さんは、1968年(昭和43年)に放映された虫プロのテレビアニメ『わんぱく探偵団』も、シナリオを執筆されていました。モノクロですので、あまり再放映はされませんでしたが、白黒ならではの、不気味なイメージや、大人の明智小五郎と二十面相の格好良さは忘れられません。
今や推理作家として有名な辻さんですが、『怪人二十面相』ファンには『少年探偵団』や『黄金仮面』、『大金塊』などからのエピソードも挿入してくれています。もちろん、美少年である小林君の女装での活躍も書かれています。
謎解きとアクション、そしてクライマックスの逆転につぐ逆転の上での大どんでん返しも、わくわくさせられるエンターテインメントです。最後に、アニメにもなっている人気マンガ作品に繋がる話も出ましたが、物語上嬉しくも少々切なさも感じました。
昔からアニメ作品や、ソノラマ文庫の『仮題・中学殺人事件』『盗作・高校殺人事件』など辻さんのユーモア・ミステリーの世界に親しませていただき、そして乱歩作品のファンとしても、存分に楽しませていただいた作品でした。

辻真先『焼跡の二十面相』(光文社刊)
辻真先さんといえば、古くからのアニメファンにとっては、『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』から、『8マン』、『デビルマン』、『マジンガーZ』、『超電磁ロボ コン-バトラーV』など、数々のテレビアニメのヒット作を手掛けてこられた伝説的な脚本家です。
1932年(昭和7年)生まれでいらっしゃいますから、今年で87歳になられることになります。
その辻さんが、若々しい10代の小林少年を主人公に、躍動感溢れる作品を執筆されたのですから、その健筆ぶりはアニメファンとしても嬉しくなります。
舞台は、終戦直後の東京。応召中の明智小五郎の留守を守る少年探偵の小林芳夫君のもとに、怪人二十面相出現の報が届きます。
小林少年は、明智小五郎の不在の中、中村警部と共に事件を追うことになります。
没落貴族や、焦土と化した東京でそれぞれ必死になって生きる人々。食べるものすら無い時代なのに、隠し財産を持ったブローカーたちは暗躍し、新たな権力である米軍におもねっています。
食べ物もなく苦しい時代ですが、中学生の小林少年はやがて帰ってくるだろう明智探偵のため、事件解決に奮闘します。
作品中に出てくる、占領軍といわず進駐軍、敗戦といわず終戦など、舞台である戦後すぐの混乱期を冷静に喝破していく小林少年の姿は、この当時同世代だった辻さんの思いでもあるのでしょう。
江戸川乱歩が、光文社の『少年』に連載し、ポプラ社で単行本化されていた少年小説の文体で書かれていますが、辻さんのこの時代を体験した人だからこそ伝えたいであろうメッセージもしっかりと記述されています。
辻さんは、1968年(昭和43年)に放映された虫プロのテレビアニメ『わんぱく探偵団』も、シナリオを執筆されていました。モノクロですので、あまり再放映はされませんでしたが、白黒ならではの、不気味なイメージや、大人の明智小五郎と二十面相の格好良さは忘れられません。
今や推理作家として有名な辻さんですが、『怪人二十面相』ファンには『少年探偵団』や『黄金仮面』、『大金塊』などからのエピソードも挿入してくれています。もちろん、美少年である小林君の女装での活躍も書かれています。
謎解きとアクション、そしてクライマックスの逆転につぐ逆転の上での大どんでん返しも、わくわくさせられるエンターテインメントです。最後に、アニメにもなっている人気マンガ作品に繋がる話も出ましたが、物語上嬉しくも少々切なさも感じました。
昔からアニメ作品や、ソノラマ文庫の『仮題・中学殺人事件』『盗作・高校殺人事件』など辻さんのユーモア・ミステリーの世界に親しませていただき、そして乱歩作品のファンとしても、存分に楽しませていただいた作品でした。

辻真先『焼跡の二十面相』(光文社刊)
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