旧虫プロダクション資料課の残滓
- 2019/12/29
- 10:14
手塚治虫さんの古くからの単行本や掲載誌などの資料は、手塚プロ資料室で蒐集・保存されています。
実は、旧虫プロダクションの時代にも、資料室は存在しました。この虫プロ資料課は、『鉄腕アトム』のセルを使いまわしするためのバンクシステムや、設定制作の資料管理のための部署として知られています。そして、手塚さんが虫プロダクションを立ち上げる以前から出版されていたマンガの単行本も、ここで管理・保存されていました。
デビュー作以降、初期の描き下ろし単行本など、それまで執筆された貴重な本が揃えられており、虫プロのスタッフは自由に閲覧することができたのです。
憧れの手塚さん率いる虫プロに就職した元マンガ少年たちは、これまで読んだことのない作品もここで読むことが出来ました。自分のアニメ制作のため集結した彼らへの、手塚さんの思いやりもあったのかもしれません。
ただ、このシステムが仇になることもあります。スタッフなら誰でも自由に閲覧できたことで、かなりの本が紛失してしまったのです。
当時、資料課の業務を任されていた野崎欣宏さんからは、貴重な単行本が結構無くなってしまい、戻すために神保町などを探しまわったとお聞きしました。勝手に持ち出して、そのまま返さない人も多かったのでしょう。
実は、ここに昭和34年(1959年)刊の光文社版『ジャングル大帝』4巻の単行本があります。カバーも無く、中は各ページに渡りコマが切り取られて、ボロボロです。
注目は扉ページに押された、虫プロダクション資料課の印と整理番号です。これは当時、虫プロ資料課で保管されていた本ということが分かります。
虫プロOBの方にお聞きしたところ、当時のことを覚えていらっしゃいました。『ジャングル大帝』班に在籍中、演出の机の上に原作の本を見つけ、手にとって驚いたことがありました。読もうと開くと、大量のページが切り抜かれていたのです。
これは演出担当がコンテを切る際、本からコマを切り取って貼り付けていたからでした。今だったらコピーするのでしょうが、まだ高価であまり使えなかった時代です。スケジュールの都合もあり、そのまま切り取ったのかもしれません。
このようなボロボロの状態では、もはや古書的にはまったく価値がないかもしれません。
ですが、これも昭和37年(1962年)12月に正式に会社組織としてスタートし、10年後の昭和48年11月終焉を迎えた虫プロダクションの貴重な歴史遺産のひとつなのです。

光文社『ジャングル大帝』第4巻

扉には、虫プロダクション資料課の印と整理番号が。
実は、旧虫プロダクションの時代にも、資料室は存在しました。この虫プロ資料課は、『鉄腕アトム』のセルを使いまわしするためのバンクシステムや、設定制作の資料管理のための部署として知られています。そして、手塚さんが虫プロダクションを立ち上げる以前から出版されていたマンガの単行本も、ここで管理・保存されていました。
デビュー作以降、初期の描き下ろし単行本など、それまで執筆された貴重な本が揃えられており、虫プロのスタッフは自由に閲覧することができたのです。
憧れの手塚さん率いる虫プロに就職した元マンガ少年たちは、これまで読んだことのない作品もここで読むことが出来ました。自分のアニメ制作のため集結した彼らへの、手塚さんの思いやりもあったのかもしれません。
ただ、このシステムが仇になることもあります。スタッフなら誰でも自由に閲覧できたことで、かなりの本が紛失してしまったのです。
当時、資料課の業務を任されていた野崎欣宏さんからは、貴重な単行本が結構無くなってしまい、戻すために神保町などを探しまわったとお聞きしました。勝手に持ち出して、そのまま返さない人も多かったのでしょう。
実は、ここに昭和34年(1959年)刊の光文社版『ジャングル大帝』4巻の単行本があります。カバーも無く、中は各ページに渡りコマが切り取られて、ボロボロです。
注目は扉ページに押された、虫プロダクション資料課の印と整理番号です。これは当時、虫プロ資料課で保管されていた本ということが分かります。
虫プロOBの方にお聞きしたところ、当時のことを覚えていらっしゃいました。『ジャングル大帝』班に在籍中、演出の机の上に原作の本を見つけ、手にとって驚いたことがありました。読もうと開くと、大量のページが切り抜かれていたのです。
これは演出担当がコンテを切る際、本からコマを切り取って貼り付けていたからでした。今だったらコピーするのでしょうが、まだ高価であまり使えなかった時代です。スケジュールの都合もあり、そのまま切り取ったのかもしれません。
このようなボロボロの状態では、もはや古書的にはまったく価値がないかもしれません。
ですが、これも昭和37年(1962年)12月に正式に会社組織としてスタートし、10年後の昭和48年11月終焉を迎えた虫プロダクションの貴重な歴史遺産のひとつなのです。

光文社『ジャングル大帝』第4巻

扉には、虫プロダクション資料課の印と整理番号が。
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