古くからのアニメファン必読 『吉田豪の巨匠ハンター』
- 2020/04/20
- 06:30
アニメやマンガ界の巨匠たちのインタビュー集、『吉田豪の巨匠ハンター』(毎日新聞出版)が刊行されました。これは、ムック『キャラクターランド』(徳間書店)に掲載されたものです。そこでアニメやマンガの錚々たる巨匠たちににプロインタビュアーである吉田豪さんが、取材されていました。
本書では、富野由悠季さん、渡辺宙明さん、松本零士さん、ささきいさおさん、辻真先さん、安彦良和さん、杉井ギサブローさん、丸山正雄さん、そして書籍化のための新取材で押井守さんと、9名の方が収録されています。
吉田豪さんといえば、『サブカルスーパースター鬱伝』、『人間コク宝』、『吉田豪の“最凶”全女伝説』、『空手☆バカ一代 地上最強の人生インタビュー集』、『レジェンド漫画家列伝』など、いつも相手の深いところまで入り込んで本音を引き出してくれるインタビューで、私も愛読していました。
ここでも、富野さんや、安彦さん、松本さんなど、各巨匠たちともすぐに打ち解けられるのは、さすがです。これは常に相手のこと徹底的に調べて取材に臨まれることと、吉田さんの先方に対するリスペクトの姿勢があるからこそ受け入れいてもらえるのでしょう。
富野由悠季さんは、チーフディレクターの原点となった『海のトリトン』を、松本零士さんからは、幼少期から海外取材での話まで、やんちゃなエピソードがどんどん出てきます。辛口の人物評を出される安彦さんですが、西崎義展さんの評価は意外にもそんなに悪いものではありません。『ジャングル大帝』の脚本を書いた辻さんは、やはり『ライオンキング』に思うところがおありでした。
さて、富野さんの話には出てきませんでしたが、当時『海のトリトン』の実際のプロデューサーは西崎さんではなく、黒川慶二郎さんでした。そこの話は、もっと詰めてお聞きしたいところでした。また、渡辺さんのお孫さんがアイドルだというお話は、吉田さんだからこそ引き出せたのでしょう。
丸山さんが明かされた、出崎統さんと杉野昭夫さんがマッドハウスを出て『あしたのジョー2』を作られた理由は、出崎さんが生前おっしゃっていた理由とはちょっと違っているようです。また、虫プロで『あしたのジョー』を製作するため奔走したのは、初代プロデューサーだった冨岡厚司さんだったと思います。面白いことに、その冨岡さんの名は杉井さんのところで出てきます。
ボーナストラックの押井守さんのインタビューでは、師匠として鳥海永行さんについて、結構話してくれています。入社時のタツノコでは、笹川さんの下についていた押井さんが、既に退社していた鳥海さんを師匠と慕われるのは、お二人の作風からみて改めて納得できました。
残念だったのは、いつもはラストに吉田さんの総括インタビューも掲載されるのですが、今回は無かったことです。前書きである「前口上」も、担当編集さんによるものでした。吉田さんも、アニメに関して思い入れをお持ちだったと思います。取材を通じてどう思われたのかは、できれば教えていただきたかったところです。
この吉田さんによるインタビューで、また新たなマンガ・アニメ史の中のピースがひとつ埋まりました。アニメ好きはもちろん、この方々の作品に影響を受けた人には、おすすめの一冊です。

『吉田豪の巨匠ハンター』(毎日新聞出版)
本書では、富野由悠季さん、渡辺宙明さん、松本零士さん、ささきいさおさん、辻真先さん、安彦良和さん、杉井ギサブローさん、丸山正雄さん、そして書籍化のための新取材で押井守さんと、9名の方が収録されています。
吉田豪さんといえば、『サブカルスーパースター鬱伝』、『人間コク宝』、『吉田豪の“最凶”全女伝説』、『空手☆バカ一代 地上最強の人生インタビュー集』、『レジェンド漫画家列伝』など、いつも相手の深いところまで入り込んで本音を引き出してくれるインタビューで、私も愛読していました。
ここでも、富野さんや、安彦さん、松本さんなど、各巨匠たちともすぐに打ち解けられるのは、さすがです。これは常に相手のこと徹底的に調べて取材に臨まれることと、吉田さんの先方に対するリスペクトの姿勢があるからこそ受け入れいてもらえるのでしょう。
富野由悠季さんは、チーフディレクターの原点となった『海のトリトン』を、松本零士さんからは、幼少期から海外取材での話まで、やんちゃなエピソードがどんどん出てきます。辛口の人物評を出される安彦さんですが、西崎義展さんの評価は意外にもそんなに悪いものではありません。『ジャングル大帝』の脚本を書いた辻さんは、やはり『ライオンキング』に思うところがおありでした。
さて、富野さんの話には出てきませんでしたが、当時『海のトリトン』の実際のプロデューサーは西崎さんではなく、黒川慶二郎さんでした。そこの話は、もっと詰めてお聞きしたいところでした。また、渡辺さんのお孫さんがアイドルだというお話は、吉田さんだからこそ引き出せたのでしょう。
丸山さんが明かされた、出崎統さんと杉野昭夫さんがマッドハウスを出て『あしたのジョー2』を作られた理由は、出崎さんが生前おっしゃっていた理由とはちょっと違っているようです。また、虫プロで『あしたのジョー』を製作するため奔走したのは、初代プロデューサーだった冨岡厚司さんだったと思います。面白いことに、その冨岡さんの名は杉井さんのところで出てきます。
ボーナストラックの押井守さんのインタビューでは、師匠として鳥海永行さんについて、結構話してくれています。入社時のタツノコでは、笹川さんの下についていた押井さんが、既に退社していた鳥海さんを師匠と慕われるのは、お二人の作風からみて改めて納得できました。
残念だったのは、いつもはラストに吉田さんの総括インタビューも掲載されるのですが、今回は無かったことです。前書きである「前口上」も、担当編集さんによるものでした。吉田さんも、アニメに関して思い入れをお持ちだったと思います。取材を通じてどう思われたのかは、できれば教えていただきたかったところです。
この吉田さんによるインタビューで、また新たなマンガ・アニメ史の中のピースがひとつ埋まりました。アニメ好きはもちろん、この方々の作品に影響を受けた人には、おすすめの一冊です。

『吉田豪の巨匠ハンター』(毎日新聞出版)
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