小田部羊一さんと奥山玲子さんの歩みが明かされる『漫画映画 漂流記』
- 2020/06/27
- 06:30
昨年9月に刊行された小田部羊一さんの『漫画映画 漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』(講談社刊)を読みました。これは、昨年のNHK朝ドラ『なつぞら』主人公のモデルとなった奥山玲子さんと小田部羊一さんご夫婦の横顔をまとめたものです。
小田部さんは、『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』の作画監督として知られています。小田部さんを、公私共に支えられたのが2007年に亡くなられた奥山さんでした。
今回、取材を受けられたのは、奥山さんが作画監督を担当された『アンデルセン童話 にんぎょ姫』監督の勝間田具治さん。東映動画長編時代のお二人を知る、ひこねのりおさん。『龍の子太郎』アニメーション演出の葛西治さん。『どうぶつ宝島』『空とぶゆうれい船』脚本・監督の池田宏さん。そして、奥山さんと若い時代から苦楽を共にした東映動画時代の同僚、山下恭子さんと宮崎朱美さんです。
お二人を知る方々が語られるエピソードから、奥山さんと小田部さんの素顔が見えてきます。
特に勝間田さんの『アンデルセン童話 にんぎょ姫』や、葛西さんによる『龍の子太郎』などの制作時の話は、初めて知ったエピソードばかりでした。
実写の監督である巨匠、浦山桐郎さんに対しても意見をしっかりと主張されていたという、奥山さんの創作への真剣な姿勢には頭が下がります。
東映動画時代、働く環境を良くするため組合活動を通じ動いておられたのが奥山さんでした。初期は女性社員は入社時「結婚して子どもが出来たら退職します」との誓約書を書かされていたそうです。その社風をご自身も出産し風当たりも強い中、前面に立って変えていかれたのです。
また、池田さんは後に任天堂へ小田部さんをスカウトされた方です。東映動画の同期入社として、小田部さんと奥山さんの仕事ぶりを明かされています。『どうぶつ宝島』での、キャシーの描き方で池田さんと宮崎駿さんが衝突してしまい、小田部さんが間に入っておられたことなどは本書で初めて知りました。
アニメーションのお仕事もそうですが、何より子育てでの保育などご苦労をされながらあれだけ後世に残るお仕事を続けてこられたプロフェッショナルとしての姿勢は、共感を覚えました。
できれば、お子さんの立場から見たご両親の姿もお聞きしたいくらいです。
『なつぞら』がきっかけで、素敵なクリエイターであり人生の先輩でもあるお二人を取り上げた書籍が出版されたことは、とてもうれしいことです。
もちろん、小田部さんによる『ハイジ』や『三千里』のキャラクターデザインなど興味深いお話も紹介されています。
素敵なお二人の人柄を、本書でもっとたくさんの方に知っていただきたいと思いました。

小田部羊一『漫画映画 漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』(聞き手:藤田健次)
小田部さんは、『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』の作画監督として知られています。小田部さんを、公私共に支えられたのが2007年に亡くなられた奥山さんでした。
今回、取材を受けられたのは、奥山さんが作画監督を担当された『アンデルセン童話 にんぎょ姫』監督の勝間田具治さん。東映動画長編時代のお二人を知る、ひこねのりおさん。『龍の子太郎』アニメーション演出の葛西治さん。『どうぶつ宝島』『空とぶゆうれい船』脚本・監督の池田宏さん。そして、奥山さんと若い時代から苦楽を共にした東映動画時代の同僚、山下恭子さんと宮崎朱美さんです。
お二人を知る方々が語られるエピソードから、奥山さんと小田部さんの素顔が見えてきます。
特に勝間田さんの『アンデルセン童話 にんぎょ姫』や、葛西さんによる『龍の子太郎』などの制作時の話は、初めて知ったエピソードばかりでした。
実写の監督である巨匠、浦山桐郎さんに対しても意見をしっかりと主張されていたという、奥山さんの創作への真剣な姿勢には頭が下がります。
東映動画時代、働く環境を良くするため組合活動を通じ動いておられたのが奥山さんでした。初期は女性社員は入社時「結婚して子どもが出来たら退職します」との誓約書を書かされていたそうです。その社風をご自身も出産し風当たりも強い中、前面に立って変えていかれたのです。
また、池田さんは後に任天堂へ小田部さんをスカウトされた方です。東映動画の同期入社として、小田部さんと奥山さんの仕事ぶりを明かされています。『どうぶつ宝島』での、キャシーの描き方で池田さんと宮崎駿さんが衝突してしまい、小田部さんが間に入っておられたことなどは本書で初めて知りました。
アニメーションのお仕事もそうですが、何より子育てでの保育などご苦労をされながらあれだけ後世に残るお仕事を続けてこられたプロフェッショナルとしての姿勢は、共感を覚えました。
できれば、お子さんの立場から見たご両親の姿もお聞きしたいくらいです。
『なつぞら』がきっかけで、素敵なクリエイターであり人生の先輩でもあるお二人を取り上げた書籍が出版されたことは、とてもうれしいことです。
もちろん、小田部さんによる『ハイジ』や『三千里』のキャラクターデザインなど興味深いお話も紹介されています。
素敵なお二人の人柄を、本書でもっとたくさんの方に知っていただきたいと思いました。

小田部羊一『漫画映画 漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』(聞き手:藤田健次)
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