新刊『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか』
- 2020/07/12
- 06:30
新刊『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか』(増渕敏之著)を読みました。これは、トキワ荘や大泉サロン、そしてコミケットを生み出した「迷宮」。また音楽界では、ヤマハのポプコン。そして多くのクリエイターが集った、原宿のセントラルアパート、などなど、それぞれの時代に多くのクリエイターを輩出した“文化的ハブ”を研究した本です。
古くは17世紀フランスの「青い部屋」やロンドンのコーヒーハウス。江戸時代の木村蒹葭堂から、銀座のカフェ・プランタンなど、多くの文化人や画家、作家が集うサロンはありました。
ただ著者の考える「サロン」とは、単なる物理的な場所だけでなく、それぞれ若きクリエイターが集まって刺激し合う広い意味での「場」を指しています。
マンガ・アニメファンとしては、コミケットを生み出すことになる「迷宮」が、雑誌『COM』の「ぐらこん」に影響を受けていたという記述が興味深いものでした。
「ぐらこん」を牽引していたのは、真崎守(峠あかね)さんです。真崎さんは『共犯幻想』や『はみだし野郎の子守唄』などで、70年代のマンガファンに多大な影響を与えたマンガ家でした。
真崎さんは、劇画誌『街』(セントラル出版)新人賞でデビューしています。その後、虫プロに入社し、同じく『街』の新人賞に入選した荒木伸吾さんを、虫プロに勧誘するのです。
『ジャングル大帝』班では、真崎さんは設定制作を担当します。アニメーターではなく、作品全体を見渡す設定制作という立場だったということは、大きく意味を感じます。
実はこの『ジャングル大帝』班には、荒木さんのほかにも金山明博さんや杉野昭夫さん、坂口尚さん、永島慎二さん、平田敏夫さん、ひこねのりおさん、北野英明さん、進藤満尾さん、上梨一也さんなどなど、多くのクリエイターが在籍していました。
上梨さんからは、みんなで旅行に行ったり、8mm映画を撮ったりと刺激的だった日々を教えていただいたこともあります。
これまで、なぜ『ジャングル大帝』から、後に名を成すことになる多くのスタッフが輩出されたのか不思議でした。本書を読んで、ここも「サロン」的な場所であったと合点がいきました。
その中心的存在の一人だった真崎守さんが、コミケを生み出すことになる「迷宮」にも影響を与えていたということは、刺激的でした。
これまで、杉野さんや金山さんにも通ずる虫プロ劇画調表現のルーツとして、村野守美さんと真崎守さんの影響の大きさを考えていました。
本書で、それとともにアニメやマンガ、そしてコミケットというファン活動の場まで、直接そして間接的であれ影響を与えたという真崎守さんの存在の重要性を、改めて感じました。

増渕敏之著『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか ~コミュニティという「文化装置」』(イースト・プレス刊)
表紙イラストは、『ブラックジャック創作秘話』の吉本浩二さんです。
古くは17世紀フランスの「青い部屋」やロンドンのコーヒーハウス。江戸時代の木村蒹葭堂から、銀座のカフェ・プランタンなど、多くの文化人や画家、作家が集うサロンはありました。
ただ著者の考える「サロン」とは、単なる物理的な場所だけでなく、それぞれ若きクリエイターが集まって刺激し合う広い意味での「場」を指しています。
マンガ・アニメファンとしては、コミケットを生み出すことになる「迷宮」が、雑誌『COM』の「ぐらこん」に影響を受けていたという記述が興味深いものでした。
「ぐらこん」を牽引していたのは、真崎守(峠あかね)さんです。真崎さんは『共犯幻想』や『はみだし野郎の子守唄』などで、70年代のマンガファンに多大な影響を与えたマンガ家でした。
真崎さんは、劇画誌『街』(セントラル出版)新人賞でデビューしています。その後、虫プロに入社し、同じく『街』の新人賞に入選した荒木伸吾さんを、虫プロに勧誘するのです。
『ジャングル大帝』班では、真崎さんは設定制作を担当します。アニメーターではなく、作品全体を見渡す設定制作という立場だったということは、大きく意味を感じます。
実はこの『ジャングル大帝』班には、荒木さんのほかにも金山明博さんや杉野昭夫さん、坂口尚さん、永島慎二さん、平田敏夫さん、ひこねのりおさん、北野英明さん、進藤満尾さん、上梨一也さんなどなど、多くのクリエイターが在籍していました。
上梨さんからは、みんなで旅行に行ったり、8mm映画を撮ったりと刺激的だった日々を教えていただいたこともあります。
これまで、なぜ『ジャングル大帝』から、後に名を成すことになる多くのスタッフが輩出されたのか不思議でした。本書を読んで、ここも「サロン」的な場所であったと合点がいきました。
その中心的存在の一人だった真崎守さんが、コミケを生み出すことになる「迷宮」にも影響を与えていたということは、刺激的でした。
これまで、杉野さんや金山さんにも通ずる虫プロ劇画調表現のルーツとして、村野守美さんと真崎守さんの影響の大きさを考えていました。
本書で、それとともにアニメやマンガ、そしてコミケットというファン活動の場まで、直接そして間接的であれ影響を与えたという真崎守さんの存在の重要性を、改めて感じました。

増渕敏之著『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか ~コミュニティという「文化装置」』(イースト・プレス刊)
表紙イラストは、『ブラックジャック創作秘話』の吉本浩二さんです。
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