あるマンガ家の航跡 天馬正人伝 その5
- 2020/08/23
- 06:30
■大田加英二デビュー (2)
昭和20年代から30年代頃には、娯楽の王様だった映画。その映画を子ども向けにマンガ化した描き下ろしの単行本は当時、各出版社から競って出版されていました。
ただ、映画作品のコミカライズは、マンガ家にとって制約の多い仕事でした。
用意されるのは、主人公の宣材スチールと脚本のみ。しかも公開に間に合わせなければならないため、執筆時間もあまりありません。
そんな中でも、「大田加英二」こと天馬さんは、スケジュールを守り、決められたページ数の中でストーリーをまとめあげる仕事ぶりで出版社の間でも評価されていたようです。
その証拠に、子ども向けマンガ単行本として、『少年覆面間者』や『電光空手打ち』、『三日月童子』など、この当時の人気映画のコミカライズ作品を多数描いています。
また、テレビ放送と同時期に日本中に大人気となった不世出のプロレスラー、力道山の描き下ろし伝記マンガも太田加英二の名で手掛けています。
鶴書房の『レスリング王 力道山』は、力道山が初興業をおこなった昭和29年(1954年)にいち早く刊行されました。
この時は、編集者から力道山の肖像写真と簡単なプロフィールを一枚だけを渡され、「これだけしかないけど、急いで描いて欲しい」と依頼されました。
勿論、マンガにしようにも元となる物語も用意されていません。しかも、執筆する時間もあまりないのです。そこで、
「どのようなストーリーにするかかなり悩んだけど、もう全部任せるからと出版社にも言ってもらったんですよ」
「それで、脇のキャラクターも自分でいろいろ考え出して、旅館に泊り込んでなんとか描きあげたんです」
と、執筆時のことを振り返っておられました。
後に『タイガーマスク』(梶原一騎/原作 辻なおき/画)など、プロレスマンガが人気となりますが、その先駆けとなった作品を天馬さんは描いていたのです。
また結成間もない吉田竜夫グループでは、その後『タイガーマスク』を描かれた辻なおきさんと遭遇しています。
プロレスマンガの元祖と、後にヒット作を描くことになる作者のお二人にどのような会話があったのか、知りたかったところです。(つづく)

大田加英二『レスリング王 力道山』(鶴書房)
昭和20年代から30年代頃には、娯楽の王様だった映画。その映画を子ども向けにマンガ化した描き下ろしの単行本は当時、各出版社から競って出版されていました。
ただ、映画作品のコミカライズは、マンガ家にとって制約の多い仕事でした。
用意されるのは、主人公の宣材スチールと脚本のみ。しかも公開に間に合わせなければならないため、執筆時間もあまりありません。
そんな中でも、「大田加英二」こと天馬さんは、スケジュールを守り、決められたページ数の中でストーリーをまとめあげる仕事ぶりで出版社の間でも評価されていたようです。
その証拠に、子ども向けマンガ単行本として、『少年覆面間者』や『電光空手打ち』、『三日月童子』など、この当時の人気映画のコミカライズ作品を多数描いています。
また、テレビ放送と同時期に日本中に大人気となった不世出のプロレスラー、力道山の描き下ろし伝記マンガも太田加英二の名で手掛けています。
鶴書房の『レスリング王 力道山』は、力道山が初興業をおこなった昭和29年(1954年)にいち早く刊行されました。
この時は、編集者から力道山の肖像写真と簡単なプロフィールを一枚だけを渡され、「これだけしかないけど、急いで描いて欲しい」と依頼されました。
勿論、マンガにしようにも元となる物語も用意されていません。しかも、執筆する時間もあまりないのです。そこで、
「どのようなストーリーにするかかなり悩んだけど、もう全部任せるからと出版社にも言ってもらったんですよ」
「それで、脇のキャラクターも自分でいろいろ考え出して、旅館に泊り込んでなんとか描きあげたんです」
と、執筆時のことを振り返っておられました。
後に『タイガーマスク』(梶原一騎/原作 辻なおき/画)など、プロレスマンガが人気となりますが、その先駆けとなった作品を天馬さんは描いていたのです。
また結成間もない吉田竜夫グループでは、その後『タイガーマスク』を描かれた辻なおきさんと遭遇しています。
プロレスマンガの元祖と、後にヒット作を描くことになる作者のお二人にどのような会話があったのか、知りたかったところです。(つづく)

大田加英二『レスリング王 力道山』(鶴書房)
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- テーマ:懐かしいアニメ作品
- ジャンル:アニメ・コミック
- カテゴリ:天馬正人伝
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