泉麻人さんが迫る三木鶏郎さんの仕事『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』
- 2020/12/23
- 06:30
泉麻人さん著の『冗談音楽の怪人・三木鶏郎 ラジオとCMソングの戦後史』(新潮社刊)を読みました。
『新潮45』に2017年6月号から2018年10月号まで連載され、2019年4月に発売されたものです。遅ればせながらようやく刊行を知りました。
三木鶏郎さんといえば、「船橋ヘルスセンター」や、「キリンレモン」、「明るいナショナル」、「くしゃみ三回ルル三錠」などのCMソングでおなじみです。
元々は、戦後ラジオで『日曜娯楽版』内の「冗談音楽」で、歌やコントによる世相風刺を手がけられ大人気となった音楽家です。
また、戦後公開されたディズニー映画の音楽監督も担当されました。当時のディズニー長編映画は、本国から録音監督が来て、吹き替え版を制作していました。
劇中曲も翻訳して録音し直さなければならないため、三木さんが起用されたのです。
元々、戦前からミッキーマウスがお好きだったので、ご自身のペンネームを三木と付けられたそうですから、不思議なご縁です。
古くからのアニメファンには、テレビアニメ黎明期に人気だった『鉄人28号』の主題歌でもなじみ深いでしょう。
本放映時に流れていた、「グリコ、グリコ、グリコ~」も含めて、三木さんの曲だったのです。
続く江崎グリコ提供の『遊星少年パピイ』や『遊星仮面』の主題歌も作詞作曲されています。これは、それまでグリコのCMソングを手掛けてきた流れで、放映枠を持っていた電通から依頼されたものだったのでしょう。実は『トムとジェリー』の日本版主題歌も、三木鶏郎さんの作詞・作曲でした。
三木さんトリローグループを結成し、キノトールさん、能見正比古さん、永六輔さん、神吉拓郎さん、野坂昭如さんなど、多彩な作家たちを輩出しました
また音楽家として、神津善行さん、いずみたくさん、桜井順さん。俳優として、逗子とんぼさん、なべおさみさん、左とん平さんなどの方々も三木さん門下です。
今回の執筆にあたり、泉さんは、残された多くの脚本や当時の新聞などを丹念にあたられます。しかも、三木さんとご縁の深い桜井順さん、伊藤アキラさん、デユークエイセスの谷道夫さん、弘田三枝子さん、中村メイコさんにも取材されています。
泉さんといえば、かつてTBS系で放送された『TV探偵団』での姿が印象的でしたが、『ナウのしくみ』や『B級ニュース図鑑』、『泉麻人の僕のTV日記』など、私も愛読してきた一人です。
戦後サブカルチャーのひとつの源流となった三木鶏郎さんと時代の歩みを、その後のサブカルチャーの担い手のおひとりとなった泉さんが解き明かしていく読み応えのある一冊でした。
泉麻人『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮選書)
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