一峰大二さんに感謝
- 2020/12/27
- 07:50
マンガ家の一峰大二さんが、11月27日に84歳で亡くなられました。
一峰さんといえば、1970年代に少年だった世代には『スペクトルマン』や『怪傑ライオン丸』、『鉄人タイガーセブン』など、ピープロ特撮番組のコミカライズ版がおなじみです。当時、劇画ともマンガとも違うペンで描きこんだ個性的な画風が人気でした。
キャラクターの走りや動きなども独特で、一峰さんの作品はすぐ分りました。
当時秋田書店のサンデーコミックスに、野球マンガ『黒い秘密兵器』(原作/福本和也)や『プロレス悪役シリーズ』(原作/真樹日佐夫)などが収録されており、探して読んでいました。
『スペクトルマン』は、元々は『宇宙猿人ゴリ』というタイトルでした。『冒険王』に連載されていましたが、スクリーントーンを使わず線で描かれたゴリや怪獣たちのおどろしい描写や雰囲気、スペクトルマンのシャープなイメージも作品世界にピッタリでした。
一峰さんは、60年代から『ナショナルキッド』や『七色仮面』(原作/川内康範)など、人気映像作品を多数マンガ化していらっしゃいました。また、『ミサイルマンマミー』や『電人アロー』など、ヒーローものでもヒット作を執筆しておられます。
初代『ウルトラマン』の『ぼくら』(講談社)で連載を任されたのは、その腕を見込まれてのことでしょう。『ウルトラセブン』も描かれ、後に朝日ソノラマで単行本化されました。このサンコミックス版で、私も遅ればせながら読むことができました。また『黄金バット』も印象に残っています。
その後、出版業界に入りある時、知人の編集者から一峰さんのことを聞きました。人気マンガの最終回を集める企画で『黒い秘密兵器』を収録しましたが、原稿は失われていました。そこで一峰さんが一冊だけお持ちだった最終巻を、バラしてそこから印刷したそうなのです。この頃コミックスは版元品切れで、もう購入できませんでした。
単行本を渡す際「読者が喜んでくれるなら」とおっしゃったそうですが、作者として最後の一冊を無くされるお気持ちを考えると、しのびなく感じました。
そこで、私が持っていた最終巻をその方を通じて、一峰さんにお渡して欲しいとお願いしました。
一峰さんがとても喜んでくださったと聞いて、ほっとしました。それからひと月くらいしてからでしょうか、編集者から、「一峰さんから預かったものがある」と連絡をもらいました。
なんだろうと思っていますと、主人公・椿君の描かれた扉絵調の見事な画稿でした。しかもサインもしっかりと入れてわざわざ描き下ろしてくださったのです。
読者のために、一冊しかない自分の単行本をバラしてだめにしたり、失くされた本をお送りしただけのファンにも、ここまでしてくださる一峰さんの優しさが沁みました。
胸躍る数々の作品を読者のために描き続けてくださった、一峰さんに感謝いたします。
一峰大二『黒い秘密兵器』画稿
その後、お会いした際にお話しましたら、
「アナタだったのか。ありがとう、本当にありがとう」と
笑顔で手をギュっと握ってくださったことは忘れられません。