ビタリスとの悲しい別れ 『家なき子 COMPLETE DVD BOOK Vol.3』
- 2020/12/28
- 07:48
10月から始まった「『家なき子』COMPLETE DVD BOOK」Vol.3が、12月24日に発売されました。
『家なき子』(原作/エクトール・マロー)は、出崎統さんと杉野昭夫さんによるテレビアニメの名作です。1977年(昭和52年)10月から1978年(昭和53年)10月まで、毎週日曜18時30分から日本テレビ系で放映されました。
日曜の18時30分といえば、フジテレビ系では『サザエさん』が放送されている時間です。この時間に同じアニメを見るとすると、どうしてもファミリー向けの方が支持されます。
しかも、家庭用の録画ビデオ機もまだそれほど普及しておらず、『家なき子』を見るために苦労した人も多かったのです。
当時アニメファンにとって、杉野昭夫さんは特別な存在でした。1973年(昭和48年)から74年に放映された『エースをねらえ!』(原作/山本鈴美香)や、1976年(昭和51年)から放映されていた『まんが世界昔ばなし』などで、抒情的で繊細な作画に魅かれていたのです。
『エースをねらえ!』以降、『大空魔竜ガイキング』や『ラ・セーヌの星』で、キャラクター原案などは手掛けておられましたが、メインスタッフとしてテレビシリーズへの参加はありませんでした。
そこに、児童文学の名作『家なき子』を、出崎統さんと手掛けられるというニュースです。出崎さん杉野さんコンビの新作を見ることができるのが、なにより楽しみでした。
過酷な運命に弄ばれながらも、屈せず前向きに立ち向かうレミのけなげな姿。それを厳しいながらも暖かく見守るビタリスとのドラマには、観る者を引き込まずにはいられません。
第22話「名優ジョリクール」から、第31話「ありがとうマチヤ」までが収録されています。
特にシリーズ前半のクライマックス、ビタリスとの別れが描かれる第26話は注目です。極寒の夜、吹雪から身を挺してレミを守るビタリスの姿は、何度見ても涙なくしては見ることができません。
ブックレットには、マンガ家の島本一彦さんのインタビューが収録されています。島本さんも、この作品に対する熱い思いを語っておられます。
ほかにも、設定や版権原画キャラリー、印象的な名場面の絵コンテなどのページもあります。
当時の作監修正原画も、「秘蔵修正原画集」として掲載されています。2号に渡って掲載されますが、後に描かれた版権原画だけでなく放映当時の杉野さんによる修正も見ごたえがあります。
レミやビタリス、カピやドルチェたちなどですが、修正原画からも最初のキャラ設定から杉野さんの絵もシリーズが進むにつれ進化していることが分ります。
ビタリスの死から親切なアキャン家の人々との別れ、そしてマチヤとの新しい出発とレミの旅はまだまだ続きます。
これからもレミたちの旅を見守っていこうと思います。
『家なき子 COMPLETE DVD BOOK』vol.3(ぴあ刊)
今回、ブックレットに協力させていただきました。
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