鷺巣さんとココア缶
- 2014/04/27
- 21:31
もう10年以上前のことでしょうか。DVDの版権関連の打ち合わせでエイケンにお邪魔した際、その頃まだ在籍しておられた長い付き合いのベテランプロデューサー兼コーディネーターの鷺巣政安さんに、怪訝な表情で、こう言われたことがあります。
「星さんは、いつも原画やセル画にこだわるよね。だって本当なら原作モノだったら、原作者の絵が一番なんじゃないの」
確かにエイケンがTCJ時代から制作してきたテレビアニメは、『エイトマン』や『鉄人28号』、『サスケ』や『サザエさん』など、圧倒的にマンガ原作の作品が多数を締めていました。
ここ10年位前から発売されたかつての作品のDVDソフトのパッケージでも、初期の作品は大体原作やキャラクター原案のマンガ家さんが描いたイラストを多用していたと思います。
ですが、少なくとも私自身が依頼された場合、「アニメ作品を紹介する時には、原則としてアニメの絵を出来れば使用させていただきたい」と、常々思っていました。
やはり一ファンとしても、原作のマンガ作品は無論好きでしたが、少年時代毎週ワクワクして見ていたのはアニメ作品自体でしたし、テレビ画面の中で活躍するキャラクターの絵に魅力を感じていたからです。
放映当時はアニメ雑誌など当然ありませんし、子供用のキャラクター商品でしかその作品の絵には触れる機会はありません。しかもその絵というのもだいたいが原作寄りか、別のイラストレーターが描いた絵が多く、アニメ版のイラストを使用したものなど、殆どありませんでした。
あの頃から、子ども心にアニメ自体の絵を常に欲していたように思います。
幼少時の記憶をたどってみると、私が3、4歳だった頃(古い話でスミマセン)、『ジャングル大帝』のセル画イラストがプリントされたココア缶がとても気に入っていました。
母親も、ココアを与えると喜ぶので、結構買ってくれていたようです。そのパッケージに描かれたレオの絵を気に入って、いつもニコニコして見つめていたそうです。そして、そのココア缶の空き缶を宝箱のようにして、お菓子のオマケやお気に入りのオモチャをしまって遊んでいました。
考えてみれば、2、3歳の子どもには原作マンガに触れる機会など無いわけですし、当時から既にアニメの絵の魅力にハマっていたのかもしれません。
なによりアニメでみていたキャラクターたちは、ブラウン管のなかで存在していました。本当にレオやアトムたちが、テレビの向こう側で生きていると思っていたのです。
そんな彼らのポートレートが印刷されていたココア缶は、私にとって本当に大事な宝物だったと思います。そんなココア缶も成長するに従い、何処かへ消えていってしまいましたが、この記憶だけは確かなものです。
鷺巣さんは、前記の会話で、こう続けて話されました。
「でもね、そう言ってくれるのは、本当は嬉しいんですよ。だってねアニメを描いてたのは、漫画家さんじゃなくてボクらTCJのスタッフなんだもの」
鷺巣さんは、アニメ創世記からこの現場で働いてこられた方です。
マーチャンダイジングの始まりから、業界黎明期より様々な試行錯誤を経験されてこられました。メーカーとの交渉などでは、古い時代だと、原作のイラストを強く要求されたことも多々あったそうです。せっかく忙しいアニメーターに時間を割いてもらってようやく仕上げたのに、修正を要求されたことも多々あったと聞きました。
「だって鷺巣さん、私たちが好きだったのは、アニメ作品ですよ。原作も好きですけど、毎週放送を楽しみにみていた、あのアニメの絵が忘れられないんです」
その時、鷺巣さんは、ただ短く「そう」とだけ言って、ニッコリと微笑まれました。(了)
「星さんは、いつも原画やセル画にこだわるよね。だって本当なら原作モノだったら、原作者の絵が一番なんじゃないの」
確かにエイケンがTCJ時代から制作してきたテレビアニメは、『エイトマン』や『鉄人28号』、『サスケ』や『サザエさん』など、圧倒的にマンガ原作の作品が多数を締めていました。
ここ10年位前から発売されたかつての作品のDVDソフトのパッケージでも、初期の作品は大体原作やキャラクター原案のマンガ家さんが描いたイラストを多用していたと思います。
ですが、少なくとも私自身が依頼された場合、「アニメ作品を紹介する時には、原則としてアニメの絵を出来れば使用させていただきたい」と、常々思っていました。
やはり一ファンとしても、原作のマンガ作品は無論好きでしたが、少年時代毎週ワクワクして見ていたのはアニメ作品自体でしたし、テレビ画面の中で活躍するキャラクターの絵に魅力を感じていたからです。
放映当時はアニメ雑誌など当然ありませんし、子供用のキャラクター商品でしかその作品の絵には触れる機会はありません。しかもその絵というのもだいたいが原作寄りか、別のイラストレーターが描いた絵が多く、アニメ版のイラストを使用したものなど、殆どありませんでした。
あの頃から、子ども心にアニメ自体の絵を常に欲していたように思います。
幼少時の記憶をたどってみると、私が3、4歳だった頃(古い話でスミマセン)、『ジャングル大帝』のセル画イラストがプリントされたココア缶がとても気に入っていました。
母親も、ココアを与えると喜ぶので、結構買ってくれていたようです。そのパッケージに描かれたレオの絵を気に入って、いつもニコニコして見つめていたそうです。そして、そのココア缶の空き缶を宝箱のようにして、お菓子のオマケやお気に入りのオモチャをしまって遊んでいました。
考えてみれば、2、3歳の子どもには原作マンガに触れる機会など無いわけですし、当時から既にアニメの絵の魅力にハマっていたのかもしれません。
なによりアニメでみていたキャラクターたちは、ブラウン管のなかで存在していました。本当にレオやアトムたちが、テレビの向こう側で生きていると思っていたのです。
そんな彼らのポートレートが印刷されていたココア缶は、私にとって本当に大事な宝物だったと思います。そんなココア缶も成長するに従い、何処かへ消えていってしまいましたが、この記憶だけは確かなものです。
鷺巣さんは、前記の会話で、こう続けて話されました。
「でもね、そう言ってくれるのは、本当は嬉しいんですよ。だってねアニメを描いてたのは、漫画家さんじゃなくてボクらTCJのスタッフなんだもの」
鷺巣さんは、アニメ創世記からこの現場で働いてこられた方です。
マーチャンダイジングの始まりから、業界黎明期より様々な試行錯誤を経験されてこられました。メーカーとの交渉などでは、古い時代だと、原作のイラストを強く要求されたことも多々あったそうです。せっかく忙しいアニメーターに時間を割いてもらってようやく仕上げたのに、修正を要求されたことも多々あったと聞きました。
「だって鷺巣さん、私たちが好きだったのは、アニメ作品ですよ。原作も好きですけど、毎週放送を楽しみにみていた、あのアニメの絵が忘れられないんです」
その時、鷺巣さんは、ただ短く「そう」とだけ言って、ニッコリと微笑まれました。(了)
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