ナガノさんの新たな世界『ちいかわ』
- 2021/04/25
- 06:30
「自分ツッコミくま」が活躍する、『MOGUMOGU食べ歩きくま』でおなじみのナガノさん。スピンオフ作品『自分ツッコミくまの本 もぐらコロッケのうた』に続き、新作が発売されました。
『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ 第1巻』(講談社)です。
『もぐらコロッケ』同様に、これまでTwitterで発表された作品をまとめたものです。
コロッケともぐらが合体したかわいい生き物、もぐらコロッケは、『MOGUMOGU食べ歩きくま』でもおなじみの人気キャラクターでした。
ナガノさんの作品は単にかわいいだけでなく、シュールで不思議な世界観も見え隠れします。
今回の新作『ちいかわ』も、サブタイトルのとおり「小さくてかわいいやつ」ですが、その世界もまたひとひねりありそうです。
物語は、主人公のちいかわくんと、ハチワレくん、うさぎくんの三匹の日常が中心です。ドラ焼きやチャルメララーメン、酢こんぶなどナガノさんらしい食べ物のエピソードや、キラカード、何故か武器である“さすまた”など、ちょっと不思議で楽しいお話が描かれるのです。
読み進めると徐々に、ちいかわの生きている世界が、単にメルヘンだけでないことも分ります。何かと戦っている兵士がいたり、時には彼らを人形に変えてしまう魔物が出現したり、食べるために労働をしにもいかなければなりません。
力のないちいかわは、何かを退治する“討伐”ではなく、“草むしり”を選びますが、それだけでは報酬も少ないのです。
たまたま、ちいかわは「むちゃうまヨーグルト」の懸賞で当たった家に住んでいますが、インスタントラーメン“チャリメラ”が好物のはちわれが住んでいるのは洞窟のようです。兵士のなかにハンドメイド好きな人がいたり、討伐で抜群の成績を残すラッコがいたりと、ナガノさんらしく味わい深いキャラクターも登場してます。
かわいくユーモラスな魅力の『ちいかわ』の世界ですが、ナガノさんらしく、まだまだ隠された深い設定がありそうです。
考えてみれば、私たちが生きているこの時代も、なにか得体の知れない不安が付きまとっているのに、気づいていないか見ない振りをしているだけなのかもしれません。
巻頭の「こういう風になってくらしたい」を読むと、ナガノさんがちいかわにご自身を重ねていることがわかります。
できれば、ちいかわくん、はちわれくん、うさぎくんたちに、あまり大きな事件もなく、楽しく平和な日常を過ごしてもらえればとも思います。
巻末に予告が載っている「草むしり検定編」が収録される2巻も楽しみです。

ナガノ 『ちいかわ 第1巻』(講談社ワイドKC)
書店ではずっと品切れで、重版の3刷でようやく買えました。
- 関連記事