須田正己さんに感謝

　アニメーターの須田正己さんが、８月１日に亡くなられました。七十七歳でした。昨年７月頃よりご体調を崩されていたそうです。

　須田さんは、古くからのファンには『科学忍者隊ガッチャマン』や『破裏拳ポリマー』、『宇宙の騎士テッカマン』など、タツノコプロ黄金期のリアルＳＦ作品でおなじみでした。
　その後、活動の場を東映動画にも拡げられます。『SF西遊記スタージンガー』などは、様々な作品に参加されます。また『キャンディキャンディ』や『愛してナイト』、『ゴールドライタン』、『科学忍者隊ガッチャマンⅡ』など、番組の顔とも言えるオープニング作画も数多く担当されました。

　ここ数年では『妖怪ウォッチ』のアニメーションキャラクターも手掛けられています。あのジバニャンのチャーミングなキャラは須田さんならではでした。ギャグから劇画調まで、あらゆる作品を魅力的なタッチと動きで描いていらっしゃいました。

　印象的だったのは、やはり１９８４年（昭和５９年）から始まった『北斗の拳』です。
　リアルで生命力あふれたキャラと作画は、観る者に迫りました。須田さんは初期から各話作監として、担当回の原画を一人で描いておられました。須田さんの回は、見ていてもすぐ分かったものです。

　須田さんはキャラクターデザインを担当されましたが、三年続けていくうち絵は変わっていきます。
　ケンシロウはシブさを増していきますし、ラオウたちとの戦いもよりハードに描かれます。『北斗の拳２』の終盤では、キャラは最初とはまったく変わりましたが、よりその魅力は伝わってきました。
　「自分では、変えたつもりはなかったんですよ。だけど、描いているうちにどんどん変わっちゃいましたね。その時の気持ちが入っていたからなのかな」と教えていただいたこともあります。

　須田さんには、毎年年末に行われるレジェンドたちの忘年会でお会いしていました。
　「ここに来ると、楽しいんですよ。僕はアニメではあまり友達がいないけど、このみんなは同級生みたいなものですからね」「そう、戦友なんですよ。みんな元気で集まれるのがうれしいですよ。呼んでくれるアベちゃん（アベ正巳さん）にホント感謝です」と、いつも微笑んでいらっしゃいました。
　
　ここ数年は年末にしかお会い出来ませんでしたが、毎回「星さんに話しとこうかな」と、いつも最近の活動を教えてくれていました。ポール・マッカートニーを描いて、本人にとても喜ばれたこと。ドバイからのお仕事。格闘技大会のポスターを描いたこと。個人的に進めていた絵本の話、などなど。
　常に新しいお仕事を楽しそうに語られ、いつも前向きでポジティブなそのお姿は、人生の先輩としても多くを学ばせていただいておりました。

　「僕はね、こうして僕が頑張っていれば、次に続くアニメーターたちにもこんな道があるんだって、希望を持ってもらえると思っているんですよ。だから、どんどん新しいことをやっているんです」。
　ふと真顔になりこちらの目をじっと見つめてお話しいただいたことは、今も覚えています。

　これまでいろいろな作品で素敵な作画を見せてくださった須田正己さんに感謝いたします。
　

　
『北斗の拳』須田正己さん原画
左上は、最初のオープニング修正。
そしてシリーズ中盤、右下が
『北斗の拳２』最後の参加回の原画です。
Mr.MASAMI SUDA forever