みなもと太郎さんに感謝
- 2021/10/13
- 06:30
マンガ家のみなもと太郎さんが8月7日に亡くなられました。74才でした。
みなもとさんといえば、長期連載だった『風雲児たち』でおなじみです。また昔からのマンガファンには『レミゼラブル』、『ホモホ7』などの作品も、愛読された方が多いでしょう。
私は、みなもとさんが『月刊マンガ少年』(朝日ソノラマ刊)に1976年(昭和51年)9月号から79年8月号まで連載された、『おたのしみはこれもなのじゃ』を特に愛読していました。
『月刊マンガ少年』は、手塚治虫さんの『火の鳥』や石ノ森章太郎さんの『サイボーグ009』、松本零士さんの『ミライザーバン』などが連載されていました。また、水木しげるさんや藤子不二雄さんの読み切りも時々掲載され、マンガファンには見逃せない雑誌だったのです。
またアニメファンには、まだアニメ雑誌も出ていなかった頃に、「アニメーション・ワールド」というアニメ記事を連載をいち早く始めてくれた貴重な存在でもありました。
そして、その中でもひときわ異彩を放っていたのが、みなもと太郎さんの「おたのしみはこれもなのじゃ」だったのです。これは和田誠さんが『キネマ旬報』に連載された「映画の名セリフ! おたのしみはこれからだ」を、マンガに移し変えたものです。本家は、和田さんが映画の名シーンの俳優を描き、セリフとともに映画を紹介するものでした。みなもとさんは、レイアウトもそのままマンガに置き換えたのです。
連載では、戦後の赤本から貸本劇画、少女まんが、学習まんがなど、様々な作品をセリフと印象的なシーンを模写して紹介してくれました。絵も、みなもとさんのタッチでありながら、その作品の雰囲気も分かる見事なものでした。
当時は、まだインターネットもなくマンガに関する情報など乏しい時代です。好きなマンガ家の過去の作品を読もうにも、手塚さんや横山光輝さんなど大御所以外にはリストも存在せず、地道に古書店で探すしかありません。
そんな中で、みなもとさんはご自身のこれまでの読書体験のなかで、面白かったものや歴史的な価値のある作品などを、歴史やジャンルを越えて縦横無人に教えてくれました。マンガの世界もかつての紙芝居や絵物語、貸本劇画から、アニメなどにまで連綿と繋がっていることも読んでいくうちに分かりました。
この連載中に、山本まさはるさんの『ゴールデンボーイ』や、園山俊二さんの『火星にシルクハットを』などを知り、かなり探して読むことが出来ました。
以前お会いした際、感謝の気持ちを申し上げましたが、「そんなに影響力があったんだったら、何でどこも取り上げないんだろうね」なんて、シニンカルに微笑まれたこともありました。
ただ、その価値あるお仕事は、後進の研究者にきっと受け継がれていきます。
みなもと太郎さんに、改めて感謝いたします。

みなもと太郎『漫画の名セリフ』(立風書房刊)とその後出された
『お楽しみはこれもなのじゃ 漫画の名セリフ』(角川書店)
連載をまとめられた単行本です。
みなもとさんといえば、長期連載だった『風雲児たち』でおなじみです。また昔からのマンガファンには『レミゼラブル』、『ホモホ7』などの作品も、愛読された方が多いでしょう。
私は、みなもとさんが『月刊マンガ少年』(朝日ソノラマ刊)に1976年(昭和51年)9月号から79年8月号まで連載された、『おたのしみはこれもなのじゃ』を特に愛読していました。
『月刊マンガ少年』は、手塚治虫さんの『火の鳥』や石ノ森章太郎さんの『サイボーグ009』、松本零士さんの『ミライザーバン』などが連載されていました。また、水木しげるさんや藤子不二雄さんの読み切りも時々掲載され、マンガファンには見逃せない雑誌だったのです。
またアニメファンには、まだアニメ雑誌も出ていなかった頃に、「アニメーション・ワールド」というアニメ記事を連載をいち早く始めてくれた貴重な存在でもありました。
そして、その中でもひときわ異彩を放っていたのが、みなもと太郎さんの「おたのしみはこれもなのじゃ」だったのです。これは和田誠さんが『キネマ旬報』に連載された「映画の名セリフ! おたのしみはこれからだ」を、マンガに移し変えたものです。本家は、和田さんが映画の名シーンの俳優を描き、セリフとともに映画を紹介するものでした。みなもとさんは、レイアウトもそのままマンガに置き換えたのです。
連載では、戦後の赤本から貸本劇画、少女まんが、学習まんがなど、様々な作品をセリフと印象的なシーンを模写して紹介してくれました。絵も、みなもとさんのタッチでありながら、その作品の雰囲気も分かる見事なものでした。
当時は、まだインターネットもなくマンガに関する情報など乏しい時代です。好きなマンガ家の過去の作品を読もうにも、手塚さんや横山光輝さんなど大御所以外にはリストも存在せず、地道に古書店で探すしかありません。
そんな中で、みなもとさんはご自身のこれまでの読書体験のなかで、面白かったものや歴史的な価値のある作品などを、歴史やジャンルを越えて縦横無人に教えてくれました。マンガの世界もかつての紙芝居や絵物語、貸本劇画から、アニメなどにまで連綿と繋がっていることも読んでいくうちに分かりました。
この連載中に、山本まさはるさんの『ゴールデンボーイ』や、園山俊二さんの『火星にシルクハットを』などを知り、かなり探して読むことが出来ました。
以前お会いした際、感謝の気持ちを申し上げましたが、「そんなに影響力があったんだったら、何でどこも取り上げないんだろうね」なんて、シニンカルに微笑まれたこともありました。
ただ、その価値あるお仕事は、後進の研究者にきっと受け継がれていきます。
みなもと太郎さんに、改めて感謝いたします。

みなもと太郎『漫画の名セリフ』(立風書房刊)とその後出された
『お楽しみはこれもなのじゃ 漫画の名セリフ』(角川書店)
連載をまとめられた単行本です。
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